今回は、物権総論の学習だわ!
物権総論は、物権の基本だモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「物権:物権総論」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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物権とは何か
物権とは、土地や建物などの一定の物を支配して利益を受ける権利です。
一物一権主義
物権は、同一の物について同一の内容の物権は複数成立しないという排他性を有しています(一物一権主義)。
一物一権主義
物権法定主義
物権は排他性を有するとても強い権利なので、国民が勝手に物権を作ってしまうと混乱します。
そこで物権は、法律に定めるものの他は創設できないとされています(物権法定主義)。
物権の種類
物権は、現実に物を支配しているという事実状態(占有)に基づく権利である占有権と、占有を適法なものとする本権に大きく分けることができます。
本権は、自分のもっている物を自由に使用・収益・処分する権利である所有権と、使用・収益・処分のいずれかが制限されている制限物権に分けることができます。
制限物権は、他人のもっている物を使用・収益する権利である用益物権と、他人のもっている物を自分の債権の担保のために処分する権利(担保物件)に分けることができます。
物権の種類
物権的請求権
物権的請求権とは、物権の円満な支配状態が妨害されまたは妨害されるおそれがある場合に、妨害の廃除または予防のために、一定の行為をすることまたはしないことを請求しうる権利です。
物権的請求権には、返還請求権、妨害排除請求権、妨害予防請求権の3種類があります。
目的物の占有を喪失した場合に、法律上の正当な根拠なくして物を占有する人に対して、その返還を請求する権利
物権内容の実現に妨害がある場合に、妨害をしている人に対して、その妨害の廃除を請求する権利
物権に対する妨害が将来発生する危険がある場合に、それを防止しうる地位にある人に対して、その防止を請求する権利
物権変動
物権変動とは何か
物権変動とは、物権の発生・変更・消滅のことです。
物権変動は、契約による場合のほか、取得時効や相続など契約によらない場合にも生じます。
物権変動
物権変動の成立要件
物権変動は、当事者の意思表示のみによって効力が生じ、成立要件として他の形式(登記・引渡しなど)は要求されません(意思主義)。
したがって、契約による物権変動の場合、特約がない限り、契約が成立した時点で物権変動が生じます。
177条の「第三者」
対抗要件とは何か
Aは、自己の所有する土地をBに売却したが、所有移転登記はしなかった。
その後、Aは、この土地をCにも売却して、所有権移転登記をした。
上の事例では、二重売買されていますが、一物一権主義の原則により、土地の所有者はどちらか一人になります。
民法は、不動産に関する物権の得喪および変更は、登記をしなければ、第三者に対抗できないとしています。
つまり、不動産物権変動の対抗要件は登記です。
したがって、登記を備えていないBはCに対抗できず、Cが土地の所有者になります。
第三者とは何か
客観的要件
対抗要件を備えなければ物権変動があったことを主張できない「第三者」とは、当事者もしくはその包括承継人以外の者であって、不動産に関する物権の得喪・変更の登記の欠缺を主張する正当の利益を有する者です。
第三者
当たる人 | 当たらない人 |
・二重譲渡の譲受人 ・対抗要件を具備した賃借人 ・差押債権者 | ・不法占有者 ・無権利者 ・転々譲渡の後主:前主 ・譲渡人の相続人 |
主観的要件
第三者に当たるかどうかの判断に、善意・悪意は関係ありません。
もっとも、背信的悪意者は第三者に当たらず、対抗要件(登記)を備えなくても対抗できます。
背信的悪意者
- 詐欺または強迫によって登記申請を妨害した者
- 復習目的で買い受けた者
- 登記のない第一買主に高値で売りつけようとして買い受けた者
- 第一譲渡の代理人であった者
登記を対抗要件とする物権変動
取消しと登記
取消し前の第三者
売主Aが自己所有の土地を買主Bに売却し、所有権移転登記をした。
その後、Bが土地を第三者Cに転売した後に、AはAB間の契約を取消した。
制限行為能力者・強迫を理由として取消した者(売主A)は、取消し前の第三者Cが善意無過失であっても、登記なしで対抗できます。
一方、詐欺・錯誤を理由として取消した者(売主A)は、善意無過失の第三者には対抗できません。
取消し後の第三者
売主Aは、買主Bの詐欺により自己所有の土地をBに売却し、所有権移転登記をした。
その後、Aはだまされていたことに気付き、AB間の売買契約を取消したが、まだ登記がBにある間にBは土地を第三者Cに転売した。
買主Bを起点として、対売主Aと対第三者Cへの二重譲渡があったとみなされて、AかCの早く登記をした者が相手に対抗できます。
解除と登記
解除前の第三者
売主Aが自己所有の土地を買主Bに売却し、Bが第三者Cに土地を売却した後、AはBが土地の代金を支払わないため、Bとの契約を解除した。
当事者の一方が解除権を行使したときは、当事者は原状回復義務を負うので、BはAに対して土地を返還する義務を負います。
しかし、原状回復義務を理由として第三者Cの権利を害することはできないので、第三者Cが保護を受けるためには、登記が必要です。
第三者Cは、登記を備えている場合に限り保護されます。
解除後の第三者
売主Aは、自己所有の土地を買主Bに売却したが、Bが土地の代金を支払わないため、Bとの間の土地の売買契約を解除した。
その後Bは、第三者Cに土地を転売した。
土地の売買契約が解除され、所有権が売主Aに復帰した場合、売主Aは登記をしていなければ、契約解除後に買主Bから土地を取得した第三者Cに対抗できません。
解除の時点でB→Aの所有権の復帰があったと扱うことができ、Bを起点とするA・Cへの二重譲渡とみなされるからです。
取得時効と登記
時効完成時の所有者
時効取得者Aは、元の所有者Bの所有していた土地の所有権を時効により取得した。
土地を時効により取得した時効取得者Aは、元の所有者Bに対して、登記がなくても時効取得をもって対抗できます。
時効完成前の第三者
元の所有者Bが第三者Cに対して自己所有の土地を売却した後、時効取得者Aが土地の所有権を時効により取得した。
土地を時効により取得した時効取得者Aは、時効が完成する前に土地を譲り受けた第三者Cに対して、登記がなくても時効取得をもって対抗できます。
B→C→Aの流れで、土地の譲渡が行われたとみなすことができます。
時効完成後の第三者
時効取得者Aが元の所有者Bの所有していた土地の所有権を時効により取得した後、Bが土地を第三者Cに売却した。
土地を時効により取得した時効取得者Aは、時効が完成した後に土地を譲り受けた第三者Cに対して、登記がなければ時効取得をもって対抗できません。
元の所有者Bを起点とする、Aと時効完成後のCへの二重譲渡とみなすことができるからです。
相続と登記
共同相続と登記
被相続人Aが死亡し、相続人Bと相続人Cが2分の1ずつ共同相続した土地につき、Cが勝手に単独所有権取得の登記をした後、土地を第三者Dに譲渡し登記も移転した。
相続財産の土地について、単独所有権移転の登記をした相続人Cから、土地の譲渡を受けた第三者Dに対し他の相続人Bは、自己の持分を登記なしで対抗できます。
なぜなら、CがBの持分を自己名義に登記して譲渡しても、Cが無権利者である以上Dは取得できず、Dもまた無権利者となるからです。
遺産分割と登記
被相続人Aが死亡し、相続人Bと相続人Cが2分の1ずつ共同相続した土地につき、BC間の遺産分割協議によりBが土地の単独所有権を取得することとされた後、Cが自己の法定相続分を第三者Dに譲渡した。
遺産分割により相続分と異なる権利を取得した相続人Bは、登記を経なければ、分割後に土地の権利を取得した第三者Dに対し対抗できません。
なぜなら、相続でいったん取得した権利は、第三者に対して、分割時に新たな変更をしたものと同じとみなすことができるからです。
すなわち、Cを起点としたBとDへの二重譲渡と同様になります。
相続放棄と登記
被相続人Aが死亡し、相続人Bと相続人Cが2分の1ずつ共同相続するはずであったが、Cは相続を放棄した後、自己の法定相続人分に応じた持分を第三者Dに譲渡した。
相続放棄をしてしまうと、最初から何も相続しなかったことになるので、相続人Cは無権利者となります。
したがって、Cから譲渡してもらった第三者Dも無権利者になり、登記をしたとしても相続人Bには対抗できません。
Bは登記をしなくても、土地のすべてについて所有権を主張できます
対抗要件
動産物権変動の場合、対抗要件となるのは引渡しです。
引渡しには、「現実の引渡し」「簡易の引渡し」「占有改定」「指図による占有移転」の4種類があります。
引渡しの態様
意味 | |
現実の引渡し | 現実になされる引渡し |
簡易の引渡し | 譲受人がすでに目的物を所有している場合に、占有権移転の合意のみによる引渡し |
占有改定 | 譲渡人が目的物の所持を継続する場合に、譲受人が譲渡人を介して代理占有する合意によって占有物を移転する方法 |
指図による占有移転 | 間接占有者が第三者との合意および直接占有者への指図によって、直接占有者に所持させたまま第三者に占有権を移転する方法 |
即時取得
即時取得とは何か
真の所有者Aは、売主Bに自己の所有する腕時計を貸していた。
ところがBは、腕時計を自己の物と偽って、善意無過失の買主Cに売却して引き渡した。
以下をすべて満たす場合は、買主Cは腕時計の権利を取得できます(即時取得)。
- 取引行為がある
- 平穏かつ公然
- 動産の占有を始める
- 取引の相手方が善意無過失
要件
取引行為
即時取得が成立するためには、取引行為が必要です。
取引行為に当たる | 取引行為に当たらない |
・強制競売 ・質権設定 ・代物弁済 | ・山林の伐採 ・遺失物の取得 ・相続 |
動産の占有
即時取得が成立するためには、目的物が動産であることが必要です。
また、「占有を始めた」とは、現実の引渡し・簡易の引渡し・指図による占有移転のいずれかが必要であり、占有改定では足りません。
善意無過失
善意は、186条1項により推定され、無過失は、188条により推定されます。
効果
即時効果の効果として、動産について行使する権利を取得することが挙げられます。
「動産について行使する権利」とは、売買なら所有権、質入なら質権です。
盗品・遺失物の特則
即時取得が成立した場合において、占有物が盗品または遺失物であるときは、そのときから2年間、占有者に対して物の回復を請求できます。
もっとも占有者が、盗品または遺失物を競売もしくは公の市場で善意で買い受けたときは、支払った代価を弁償しなければ物を回復することができません。
混同
所有物と他物権の同一人への帰属
買主Aは、売主Bの所有する土地につき地上権の設定を受けて土地を使用していたが、その後Bから土地を買い受けた。
同一の物について所有権および他の物権(地上権・抵当権など)が同一の人に帰属したときは、他の物権は混同によって消滅します。
上の事例では、Aの地上権が消滅します。
所有する土地に、地上権を併存させておく必要がないからです。
もっとも、B所有の土地やAの地上権に抵当権が設定されていれば、Aの地上権は消滅しません。
所有権以外の物権とこれを目的とする権利の同一人への帰属
Aの所有する土地にBが地上権を設定していて、その地上権にCが抵当権を設定していたが、CがBを相続した。
所有権以外の物権およびこれを目的とする他の物権(抵当権など)が同一人に帰属したときは、他の権利は混同によって消滅します。
したがって、上の事例ではCの抵当権が消滅することになります。
もっとも、所有権以外の物権または他の権利が第三者の権利の目的であるときは、他の権利は消滅しません。
それではまた次回。
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