今回は、設立を学習するわ!
頻出範囲だモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「会社法:設立」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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- 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
設立の方法
発起人
発起人とは、株式会社の設立を企画して、定款に署名または記名押印した者です。
実際は会社設立の企画・事務を行った者であっても、定款に発起人として署名または記名押印していなければ、法律上、発起人とは扱われません。
設立の方法
株式会社を設立する方法には、以下の2種類があります。
発起設立 | 発起人が設立の際に発行する株式のすべてを引き受け、会社設立後当初の株主となる設立方法 |
募集設立 | 発起人が設立時発行株式の一部を引き受け、残りにつき株式を引き受ける者を募集する設立方式 |
設立の手続
株式会社は、
- 定款の作成
- 株主の確定
- 出資の履行
- 設立時役員等の選任
- 設立の登記
という手続を経て設立されます。
定款の作成
原始定款
株式会社の設立の第一段階として、発起人が定款(原始定款)を作成します。
原始定款は、公証人の認証を受けることによって、その効力を生じます。
定款に記載する事項
定款に記載する事項は、
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
の3種類に分類されます。
意味 | 具体例 | |
絶対的記載事項 | 必ず定款に定めなければならない事項であって、 定めておかないと定款自体が無効となる | ・目的 ・商号 ・本店の所在地 ・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額 ・発起人の指名名称住所 ・発行可能株式総数 |
相対的記載事項 | 定款に定めがなくても定款自体の効力に影響はないものの、 定めがない場合には効力が認められない | ・変態設立事項 ・株式の内容、種類株式の定め |
任意的記載事項 | 強行法規・公序良俗に反しなければ自由に定めることができる | ・取締役の員数 ・提示株主総会の開催時期 |
変態設立事項
変態設立事項とは、28条に規定されている4つの事項のことであり、会社の財産的基盤を危うくするおそれのある事項です。
変態設立事項
現物出資 | 金銭以外の財産による出資 |
財産引受け | 発起人が会社の成立を条件として成立後の会社のために 一定の営業用の財産を譲り受ける契約 |
発起人の報酬 その他の特別利益 | 発起人の労務に対して与えられる財産上の利益 |
設立費用 | 会社の負担する設立に関する費用 |
変態設立事項については、
- 所定の事項を原始定款に記載し
- 裁判所により選任される検査役の調査を
受けなければなりません。
なお、現物出資と財産引受については、以下の場合に検査役の調査が不要とされます。
- 定款に記載された価格の総額が500万円を超えない場合
- 市場価格のある有価証券について定款に記載された価額が有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算出されるものを超えない場合
- 定款に記載された価額が相当であることについて弁護士等の証明を受けた場合
株主の確定
株式の割当て
発起人は、株主を確定させるため、設立時発行株式に関する事項及び株主となる者を決定します(株式の割当て)。
株式発行事項の決定
設立時発行株式に関する事項のうち、設立に際して出資される財産の価額または最低額は、定款で定める必要がありますが、その他の事項は定款で定める必要はなく、原則として、発起人の多数決で決定できます。
ただし、
- 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
- 設立時発行株式と引き換えに払い込む金銭の額
- 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額
に関する事項については、定款で定めていないときは、発起人の全員の同意を得て定めなければなりません。
出資の履行
全額払込主義
発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、募集設立における募集株式の引受人は、発起人が定めた払込期日または払込み期間中に、引き受けた株式につき全額の払込みまたは全部の給付(出資の履行)をしなければなりません。
執権手続
発起人のうち出資を履行しない者がいる場合、発起人は、失権予告付きで払込みを催促し、払込みがなければ失権します。
対して、発起人以外の引受人の不履行の場合、当然に失権します。
払込取扱場所・払込取扱期間による保管証明
発起人の不正行為を防止するため、払込みは、銀行・信託会社当の払込取扱機関の払込取扱場所においてしなければなりません。
そして、募集設立の場合には、発起人は、払込取扱機関に対して、払込金の保管証明書の交付を請求できます。
対して、発起設立の場合、保管証明制度は廃止されています。
創立総会
創立総会とは、設立時株主によって構成され、設立中の会社の意思を決定するための機関です。
募集設立の場合、発起人は、設立時募集株式の払込期日または払込期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、創立総会を招集しなければなりません。
創立総会は、会社設立後の株主総会に相当するものであり、手続についても株主総会とほぼ同様となっています。
もっとも、創立総会の決議要件は、株主総会の決議要件とは異なり、原則として、議決権を行使できる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上です。
設立時役員等の選任
選任方法
設立時役員等の選任方法は、発起設立と募集設立で異なります。
発起設立 | 発起人が1株につき1個の議決権を有し、その議決権の過半数で選任する |
募集設立 | 創立総会の議決によって選任する |
設立時取締役の職務・権限等
設立時取締役が選任された後でも、設立事務を行うのは発起人です。
設立時取締役は、設立事項の調査を行う権限のみを有します。
そして、調査の結果、法令・定款違反等があれば、発起設立の場合は各発起人に通知し、募集設立の場合は創立総会へ報告しなければなりません。
設立時役員等の解任
設立時役員等は、会社が成立するまでの間、解任できます。
設立時役員等の解任方法は、発起設立と募集設立で異なります。
設立時役員等の解任方法
発起設立 | 発起人の議決権の過半数(設立時監査委員である設立時取締役・設立時監査役の場合は3分の2以上) |
募集設立 | 創立総会の議決 |
設立の登記
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します。
設立の瑕疵
設立無効
設立の登記が完了したとしても、設立手続に瑕疵があった場合には、設立は無効となります。
本来、無効であれば、いつでもだれでもその主張ができるはずです。
しかし、会社の設立の場合、すでに会社が成立したものとして活動を開始し、多数の関係者が登場しています。
そこで、設立無効は、訴えによってのみ主張することができます。
設立無効の訴えの提訴期間は、会社設立の日から2年以内に限られ、提訴権者も株主・取締約・執行役・監査役・清算人に限定されています。
そして、設立無効判決により、会社の設立は、将来に向かって効力を失います。
会社の不成立
会社の不成立とは、会社の設立が途中で頓挫し、設立の登記に至らなかった場合のことです。
この場合、発起人は、連帯して設立に関してした行為についてその責任を負い、設立に関して支出した費用を負担します。
会社の不存在
会社の不存在とは、会社の設立手続の瑕疵が著しく、そのことが外観上も明らかな場合のことです。
この場合、誰でもいつでも会社の不存在を主張できます。
設立関与者の責任
設立手続に関して違法・不正があった場合、発起人・設立時取締役は一定の責任を負わされます。また、募集設立の場合、定款に発起人として署名または記名押印はしていないものの、株式募集に関する文書等に賛助者として自己の指名を掲げることを承諾した者(疑似発起人)も、発起人と同様の責任を負います。
不足額支払責任
現物出資や財産引受の対象である財産の会社設立時の価額が定款に記載された価額に著しく不足するときは、発起人や設立時取締役は、会社に対して、連帯してその不足額を支払う義務を負います。
もっとも、この責任は発起人等にとって過酷な責任となりがちなので、以下のような場合には免責が認められています。
発起設立 | 募集設立 | ||
発起人 設立時取締役 | 現物出資者 財産引受けの譲渡人以外 | 原則ー責任を負う 例外ー検査役の調査を受けた 注意を怠らなかったことを証明 | 原則ー責任を負う 例外ー検査役の調査を受けた 注意を怠らなかったことを証明 |
現物出資者 財産引受けの譲渡人 | 責任を負う |
任務懈怠責任
会社に対する責任
発起人・設立時取締役・設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったことにより会社に損害が発生した場合、連帯してその賠償をする責任を負います。
この会社に対する責任は、総株主の同意があれば免除できます。
第三者に対する責任
発起人・設立時取締役・設立時監査役がその職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害についても賠償する責任を負います。
出資の履行を仮装した場合の責任
出資の履行を仮装した発起人や設立時募集株式の引受人は、株式会社に対し、仮装した金額の全額の支払いなどをする義務を負います。
また、出資の履行を仮装することに関与した発起人・設立時取締役も、原則として、同様の責任を負います。
出資の履行を仮装した場合の責任は、総株主の同意がなければ免除できません。
それではまた次回。
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