今回は、債権の消滅を学習するわ!
弁済・相殺を重点的に学習するモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「債権:債権の消滅」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
- 九州を拠点に自動車販売店を経営
- 2015年より金融系ブログ作成
- ほったらかし投資が座右の銘
弁済
弁済とは何か
AとBは、5月1日にAの所有する土地をBに売却する旨の契約をし、履行期は6月1日とされた。その後6月1日に、Aは土地をBに引渡しBはAに代金を支払った。
弁済とは、債権の給付内容を実現することです。
上図では、AがBに対して代金債権、BがAに対して土地の引渡債権を有していますから、Aがなした土地の引渡しやBがなした代金の支払いが弁済になります。
要件
弁済の内容
弁済の内容としては、債務の本旨に従ったものでなければなりません。
何が債務の本旨に従った弁済であるかは、当事者の意思によって定まりますが、民法には当事者の意思を補うため以下のような規定が置かれています。
弁済の内容
特定物債権 | 債権の発生原因・取引上の社会通念に照らして引渡しをすべきときの品質を定められないときは、引渡しをすべきときの現状でその物を引渡さなければならない |
種類 債権 | 中等の品質を有する物を給付しなければならない |
弁済の場所
弁済の場所は、通常は合意や慣習によって決定されます。
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生のときにその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所においてしなければなりません。
弁済の費用
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、費用は債務者の負担とされます。
もっとも、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、増加額は債権者の負担となります。
第三者弁済
第三者弁済とは、第三者が他人の債務を自己の名において弁済することです。
民法は、第三者弁済を認めていますが、以下の場合には第三者弁済が有効になりません。
- 債務の性質が許されない場合
- 当事者が反対の意思を表示した場合
- 正当な利益を有する者でない第三者が、債務者または債権者の意思に反して弁済した場合
*債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは有効
*債務者の委託を受けていることを債権者が知っていたときは有効
受領権者としての外観を有する者に対する弁済
受領権限のないものに対して弁済がなされても有効な弁済とはならず、真の債権者から請求されれば、債務者は再度弁済しなければなりません。
しかし、受領権者としての外観を有する者(表見受領権者)に対してした弁済は、弁済をした者が善意・無過失に限り、弁済の効力を有します。
弁済の提供
弁済の提供とは何か
弁済の提供とは、債務者側でなしうる必要な準備行為をして、債権者の受領を求める行為です。
効果
債務者は、弁済の提供のときから、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れます。
したがって、損害賠償や強制履行を請求されず、双務契約の場合には解除されません。
方法
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならないとされています(現実の提供)。
もっとも、債権者があらかじめ弁済の受領を拒み、または債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領を催告すれば足りるとされています(口頭の提供)。
弁済による代位
弁済による代位とは何か
Aは、Bから1000万円を借り入れ、これを担保するため、自己の所有する家屋に抵当権を設定した。そして、この貸金債務をCが保証した。その後、CがAに代わって貸金債務を弁済した。
上図において、CはAに対して求償権を取得します。
そして、Bの有していた抵当権をCに移転させ、Cの求償権の行使においてBと同様の地位を与えるのが、債務者に代わって弁済をした者の保護になり、公平の見地からも妥当です(代位弁済)。
要件
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位できます。
弁済をするについて正当な利益を有しない者は、債権者から代位弁済があった旨を債務者に通知するか、債務者が代位弁済を承諾しなければ、弁済による代位を対抗できません。
効果
債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償できる範囲内において、債権の効力および担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使できます。
代位をすべき者が複数の場合
保証人 第三取得者 | 第三取得者は保証人に代位できない |
第三取得者相互間 物上保証人相互間 | 各財産の価格に応じて、他の第三取得者・物上保証人に対して代位する |
保証人 物上保証人 | 数に応じて債権者に代位するが、物上保証人が数人いるときは、保証人の負担部分を除いた残額について各財産の価格に応じて代位する |
代物弁済
代物弁済とは何か
債務者が債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより、債務を消滅させる旨の契約をした場合において、弁済者が他の給付をしたときは、その給付は弁済と同一の効力を有するとされています(代物弁済)。
要件
代物弁済の要件
- 代物弁済契約がなされること
- 本来の給付と異なる他の給付がなされること
- 給付が本来の弁済に代えてなされること
効果
債務の消滅
代物弁済の効果は、債務の消滅です。
もっとも、本来の弁済に代えて不動産の所有権を移転する場合には、当事者が意思表示をするだけでは足りず、登記を完了して第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ債務は消滅しません。
目的物が契約内容不適合
代物弁済は、債権の消滅と他の給付とが対価関係に立つ有償契約ですから、代物弁済の目的物が契約内容不適合であった場合、売買の担保責任の規定が準用され、担保責任を追及できる場合があります。
相殺
相殺とは何か
相殺とは、債権者と債務者が相互に同種の債務を有する場合に、一方的意思表示により双方の債務を対等額において消滅させることです。
そして、相殺をしようとする側の債権を自動債権、相殺される側の債権を受動債権といいます。
要件
相殺適状
相殺適状とは、相殺をするのに適した状態のことです。
相殺適状の要件
- 2人が互いに債務を負担すること
- 両債務が同種の目的を有すること
- 両債務が弁済期にあること
- 両債務が性質上相殺を許さないものではないこと
時効と相殺
時効によって消滅した債権が消滅以前に相殺適状にあった場合には、債権者は相殺できます。
相殺の禁止事由
当事者が相殺を禁止・制限する意思表示をした場合には、悪意・重過失の第三者に対抗できます。
相殺の禁止事由
- 【自動債権】・同時履行の抗弁権などの抗弁権が付いた債権を自動債権として相殺できない
- 【受働債権】・悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権
・人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権
・差押さえ禁止債権
方法
相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってするものであり、条件または制限を付けられません。
効果
相殺の効果は、各債務者が相当額について債務を免れることです。
その効果は、相殺適状時にさかのぼって生じます。
それではまた次回。
コメント