今回は、商行為を学習するわ!
民法との比較が大事だモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「商法:商法行為」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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- 2015年より金融系ブログ作成
- 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
商行為の分類
商行為には、誰が行っても商行為となる基本的商行為と、商人がその営業のためにする行為である附属的商行為があります。
基本的商行為には、さらに絶対的商行為と営業的商行為の2種類があります。
絶対的商行為
絶対的商行為とは、その行為の有する客観的な営利的性格から、当然に商行為となるもののことです。
絶対的商行為
利益を得て譲渡する意思をもってする動産・不動産・有価証券の有償取得またはその取得したものの譲渡を目的とする行為(安く買って高く売る行為)
他人から取得する動産・有価証券の供給およびその履行のためにする有償取得を目的とする行為(高く売って安く買う行為)
株式などの金融商品の取引を目的とする金融商品取引所などにおける取引
振出し・裏書・保証などの証券上の行為
営業的商行為
営業的商行為とは、営業目的で反復・継続してなす場合に、はじめて商行為となるもののことです。
営業的商行為
賃貸する意思をもってする動産・不動産の有償取得・賃借またはその賃借したものの賃貸を目的とする行為
材料に労力を加えることを有償で引き受ける行為
電気・ガスを供給することを有償で引き受ける行為
物・人を場所的に移動させることを引き受ける行為
道路・建物の建設・建築や労働者の供給を請け負う行為
文書などを印刷して販売することや印刷・撮影を引き受ける行為
客に一定の設備を利用させることを目的とする行為
金銭・有価証券を受け入れたり給付したりする行為
対価を得て保険を引き受ける行為
他人のために物の保管を引き受ける行為
他人間の法律行為の媒介を引き受けることや、自己の名をもって他人の計算において法律行為をすることを引き受けること
本人にとって商行為である行為の代理を引き受けること
特定の者が一定の目的に従い財産の管理・処分その他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすること
附属的商行為
附属的商行為とは、商人がその営業のためにする行為です。
具体例として、営業資金に充てるためにお金を借りるなど
なお、商人の行為は、営業のためにするものと推定されます。
商行為の特則
商行為については、営利主義・取引の安全・迅速が強く要請されることから、一般市民の間の取引について定めた民法とは異なる特則が定められています。
商行為の代理と委任
代理の方式
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生じます。
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求ができます。
民法では、代理人が本人のためにすることを示すこと(顕名)が必要とされています。
しかし、顕名は手間がかかり、また相手方も本人のためにすることを知っていることが多いため、商行為の代理について顕名が不要とされています。
商行為の委任
商行為の委任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができます。
代理権の消滅
商行為の委任による代理権は、本人の死亡により消滅しません。
民法では、本人の死亡により代理権も消滅します。
しかし、商行為の代理においては、取引の安全を図る必要性が高いため、商行為の委任による代理権は存続するものとされています。
契約の成立
隔地者間における契約の申込み
商人である隔地者の間のおいて承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、申込みは効力を失います。
民法では、相当期間経過後、契約の申込みを撤回し得るにとどまり、撤回されるまで申し込みの効力は消滅しません。
しかし商法は、商取引の迅速性の見地から、申込みの効力を長く継続させて申込者の自由を拘束すべきではないとして、申込みは当然に失効するとされています。
諾否の通知義務
商人が平常取引をするもの(お得意様)から営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければなりません。
商人が通知を発することを怠ったときは、商人は、契約の申込みを承諾したものとみなされます。
民法では、遅滞なく諾否の通知を発する義務はなく、承諾の意思表示がなければ契約は成立しません。
しかし商法では、平常取引をする者の間には継続的な取引関係があり、商取引の迅速性を図る必要があることから承諾者の沈黙を承諾とみなして契約が成立するようにしています。
受領物保管義務
商人が営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、申込みとともに受けとった物品があるときは、申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもって物品を保管しなければなりません。
ただし、その物品の価格が費用を償うのに足りないとき、または商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りではありません。
商取引では、契約の申込みと同時に、見本または承諾を予期しての目的物の送付が行われることがあることから、物品の安全を確保するとともに商人に対する信用を保護するため、受領物保管義務が設けられています。
報酬請求権
商人が営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求できます。
民法上の委任契約では、無報酬が原則とされています。
しかし、商人は営利目的で行動するのが通常ですから、商人の場合は、当然に報酬を請求できるものとしています。
商事債権の性質
金銭消費貸借の利息請求権
商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求できます。
民法では、特約がない限り、消費貸借は無償です。
しかし、商人である貸主は、営利を目的として活動しているので、当然に法定利息を請求できるものとされています。
債務の履行場所
商行為によって生じた債務の履行をすべき場所が行為の性質または当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(または住所)において、それぞれしなければなりません。
民法では、特定物の引渡し債務以外の債務の履行場所は、債権者の現在の住所です。
しかし、商行為における債権者は商人であることが多いので、営業所を住所に優先させています。
商事債権の担保
多数債務者の連帯
数人の者がその一人または全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担します。
民法では分割債務が原則ですが、商法では、債務の履行を確実にするために、連帯債務が原則とされています。
連帯保証
保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、または保証が商行為であるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担します。
民法では、保証人は、連帯保証とする旨の意思表示をしない限り、催告・検索の抗弁権、分別の利益を有します。
しかし民法では、債務の履行を確実にするために、保証人の責任を強化し、連帯保証が原則とされています。
流質契約の自由
民法349条では弁済期間前の流質契約が禁止されていますが、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、弁済期前の流質契約も許されます。
これは、商行為における金融を容易にするため認められたものです。
商人間の留置権
商人間において双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、当事者の別段の意思表示があるときを除き、債権の弁済を受けるまで、債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物または有価証券を留置できます。
商人間の取引は継続的であることが通常なので、民法で要求される被担保債権と留置物の牽連性は不要とされています。
商人間の売買契約
商人間の売買契約については、取引の安全・売主の保護という観点から、民法の売買契約に関する規定とは異なる特則が定められています。
売主による目的物の供託・競売
民法では、買主が売買の目的物を引き取ってくれない場合、売主は、目的物を供託できます。
また、売買の目的物が供託に適さない場合、裁判所の許可を得て、競売できます。
しかし、裁判所の許可には時間がかかり、売主にとって不利となります。
そこで、商人間の売買においては、供託のみならず、競売もできるものとされ、競売の際に相当の時間を定めて催告すれば、裁判所の許可を得る必要はありません。
また、損傷その他の事由による価格の低下のおそれがある物は、催告をしないで競売に付することができます。
そして、売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければなりませんが、その代価の全部または一部を代金に充当できます。
定期売買の履行遅滞による解除
民法では、定期売買の時期を経過したため契約を解除する場合には、相手方に対して解除の意思表示をしなければなりません。
しかし、解除の意思表示を必要とすると、解除の意思表示がされるまで、売主は不安定な立場に置かれることになります。
そこで、商人間の売買においては、相手方が直ちに履行の請求をしない限り、当然に契約を解除したものとみなすことにして、解除の意思表示を不要としています。
交互計算契約
交互計算契約とは、商人間または商人と商人でない者の間で平常取引をする場合、一定の期間内の取引から生ずる債権・債務の総額について相殺をし、その残額の支払いをする契約です。
民法上の相殺は、対立する2つの債権を対等額において消滅させるものです。
もっとも、普段から継続的に取引をする者の間では、対立する2つの債権・債務が発生するたびに相殺をして残額を支払うのではなく、一定期間内に発生する債権・債務をひとまとめにして相殺をした方が、お金のやり取りに伴う危険と手数を省略できます。
そこで、民法における総裁の特則として、交互計算契約という制度が設けられています。
匿名組合契約
匿名組合契約とは何か
匿名組合契約とは、当事者の一方が相手方のために出資し、相手方がその営業から生ずる利益を分配することを約束する契約です。
これは、資金はもっているが自分で経営をする意思や能力がない一般市民と、経営能力はあるが、資金の乏しい商人を結びつける制度です。
なお、出資をした人を匿名組合員といい、営業を行う人を営業者といいます。
匿名組合員の出資
匿名組合員の出資は、営業車の財産に属します。
また、匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができます。
匿名組合員の権利・義務
匿名組合員は、営業者の業務を執行し、または営業者を代表することができません。
第三者に対する権利・義務
匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利・義務を有しないのが原則です。
しかし、匿名組合員が営業者の商号中に自己の氏・氏名・商号を使用することを承諾した場合は、その使用以後に生じた債務については、第三者に対して連帯責任を負うことになります。
匿名組合員契約の終了
終了原因
匿名組合員契約は、解除によって終了するほか、以下の事由によって終了します。
死亡 | 後見開始 | 破産手続開始 | |
営業者 | 〇 | 〇 | 〇 |
匿名組合員 | × | × | 〇 |
終了の効果
匿名組合契約が終了した場合、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければなりませんが、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足ります。
仲立人・問屋
仲立人
仲立人とは、他人間の商行為の媒介をすることを業とする者です。
仲立人は、当事者の間に立って商行為の成立に尽力する者であり、自ら契約当事者または当事者の代理人となって契約を締結するわけではありません。
問屋
問屋とは、自己の名をもって他人のために物品の販売または買入れをすることを業とする者です。
問屋は、仲立人と異なり、委託者のために自ら契約当事者となってその行為から生ずる権利を有し、また、業務を行います。
運送営業
運送営業とは、物や人を場所的に移動することを内容とする営業です。
このうち、物を対象とする場合を物品運送、人を対象とする場合を旅客運送といいます。
物品運送
物品運送とは何か
物品運送とは、運送人が荷送人から委託を受けた物品を保管しつつ、その物品を運送するものです。
送り状
荷送人は、運送人の請求によって送り状を交付しなければなりません。
これは、運送品や到達地など運送契約の内容を運送人に知らせるためです。
運送賃
運送品がその性質または瑕疵によって滅失・損傷したときでも、荷送人は、運送賃の支払いを拒むことができません。
運送人の損害賠償責任
運送人は、運送品の受取り・運送・保管・引渡しについて注意を怠らなかったことを証明しない限り、運送品の滅失・損傷、延着について損害賠償責任を免れることはできません。
旅客運送
旅客運送とは何か
旅客運送とは、運送人が旅客から委託を受けてその旅客を運送するものです。
場屋営業
場屋営業とは何か
場屋営業とは、一般市民が集まるのに適した設備を設け、これを利用させることを内容とする営業です。
商事寄託
商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善管注意義務を負います。
場屋営業者の責任
場屋営業においては多数の客が出入りしてその設備を利用するため、客の携帯品について盗難や紛失が生じる危険が大きいことから、場屋営業者の責任が強化されています。
例えば、場屋営業者は、客から寄託を受けた物品の滅失・損傷については、不可抗力によるものであることを証明しない限り、損害賠償責任を免れることができません。
また、客が寄託していない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失・損傷したときは、損害賠償責任を負います。
さらに、客が場屋の中に携帯した物品について責任を負わない旨を表示した場合でも、場屋営業者は、これらの責任を免れることができません。
それではまた次回。
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