今回は、商法総則を学習するわ!
条文が中心だモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「商法:商法総則」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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- 2015年より金融系ブログ作成
- 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
商人
商法の適用範囲
商人の営業、商行為その他商事については、商法が適用されます。
そこで、商法の適用対象となる「商人」の意味を明らかにしていきます。
商人
商人には、固有の商人と擬制商人の2種類があります。
固有の商人
固有の商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とすることです。
「自己の名をもって」とは、自分が権利・義務の主体となってということです。
「業とする」とは、営利の目的をもって同種の行為を反復的・継続的に行うことです。
擬制商人
擬制商人とは、商行為をすることを業としていないものの、商人とされる者のことです。
商法では、擬制商人として以下の2種類が認められています。
- 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者
- 鉱業を営む者
商業登記
商業登記とは何か
商業登記とは、個人の営業に関する重要な事項を登記させることで、その登記を見た相手が安心してその商人と取引できるようにする制度です。
商業登記の効力
商業登記には、一般的効力と不実登記の効力という2つの効果があります。
- 登記すべき事項は、登記した後は、善意の第三者に対しても対抗することができる
- 第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、第三者に対抗することはできない
- 故意または過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることを善意の第三者に対抗することができない
商号
商号とは何か
商号とは、商人がその営業上自己を表すために用いる名称です。
商号はその承認を表す名称なので、文字で記載することができ、かつ、呼称できるものでなければなりません。
したがって、記号や図形を商号とすることはできません。
商号の個数
会社の商号
会社の商号は、会社の人格を表す名称なので、会社が複数の営業を行う場合であっても、その商号は1個に限られます。
個人商人の商号
個人商人の場合、数個の営業を営むときは、各営業につきそれぞれ別個の商号を使用できます。
ただし、1個の営業につき、商号は1個に限られます(商号単一の原則)。
商号の選定
商人は、原則として、商号を自由に選べます(商号選定自由の原則)。
しかし、例外的に、以下の制限があります。
- 不正の目的をもって、他の商人であると誤認させるおそれのある名称または商号を用いてはならない
- 会社は、株式会社・合資会社・合名会社・合同会社の種類に従い、それぞれの商号中に株式会社・合資会社・合名会社・合同会社という文字を用いなければならない
- 会社は、他の種類の会社であると誤認させるおそれのある文字を用いてはならない
- 会社でない者は、その名称または商号中に、会社であると誤認させるおそれのある名称または商号を使用してはならない
商号の不正使用に対する措置
不正の目的をもって他の商人であると誤認させる商号の使用によって利益を侵害され、または侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、侵害の停止または予防を請求できます。
名板貸
名板貸とは何か
上記事例の場合、契約は実際に取引をしたBとCとの間で成立するので、CはBにたいしてのみ取引によって生じた債務の弁済を請求できるのが原則です。
しかし、BがAの商号を使用したため、Cは自己とAとの取引であると誤認しているわけですから、CからすればAに対しても債務の弁済を請求したいところでしょう。
そこで、自己の商号を使用して営業を行うことを他人(名板借人B)に許諾した商人(名板貸人A)は、自己が営業を行うものと誤認して他人と取引した者(相手方C)に対し、他人と連帯して、その取引によって生じた債務を弁済する責任を負わなければなりません。
名板貸人を営業主と信じて取引関係に入った相手方を保護するものです。
名板貸人の責任の要件
名板貸人の責任が発生するための要件は、以下の3つです。
- 名板借人が名板貸人の商号を使用して営業を行うこと
- 名板貸人が名板借人に対して商号の使用を許諾すること
- 相手方が名板貸人を営業主であると誤認すること
名板貸人の責任の範囲
名板貸人が名板借人と連帯して責任を負う債務は、「取引によって生じた債務」です。
これには、取引によって生じた債務のほか、その不履行による損害賠償債務等の本来の債務が変形した者も含まれます。
商号の譲渡
商人の商号は、営業とともにする場合または営業を廃止する場合に限り、譲渡できます。
商号が得売業上の名称として社会的・経済的に信用を集める機能を有するものであることから、商号を営業と切り離して個別に譲渡することは認められていません。
そして、商号の譲渡は、登記をしなければ第三者に対抗できません。
営業譲渡
営業譲渡とは何か
営業譲渡とは、
- 一定の営業目的により組織化された有機的一体として機能する財産の譲渡であって
- 譲受人が営業活動を承継し
- 譲渡人が法律上当然に競業避止義務
を負うこととなることです。
組織化された有機的一体として機能する財産とは、得意先関係やノウハウも含めて譲渡されるということです。
譲渡人の競業避止義務
譲渡人が同種の営業を再開できるとすると、得意先関係やノウハウを譲渡した意味がなくなってしまうので、譲渡人に競業避止義務が課せられています。
- 【原則】
譲渡人は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市区町村の区域内及びこれに隣接する市区町村の区域内においては、その営業を譲渡した日から20年間は、同一の営業を行ってはならない。 - 【特約がある場合】
譲渡人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その営業を譲渡した日から30年の期間に限り、その効力を有する - 【不正の競争の目的がある場合】
譲渡人は、不正の競争の目的をもって同一の営業を行ってはならない
譲受人の責任
商号の続用あり
譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合、譲受人は、原則として、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負います。
もっとも、譲受後、遅滞なく、譲受人がその本店の所在地において譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨の登記をした場合や、譲受人および譲渡人から第三者に対してその旨の通知をした場合には、責任を負いません。
なお、譲渡人の営業によって生じた債権について、その譲受人にした弁済は、弁済者が善意かつ重大な過失がないときは、その効力を有します。
商号の続用なし
譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合、譲受人は、原則として、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負いません。
もっとも、譲渡人の事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲受人は、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負います。
詐害営業譲渡の場合
譲渡人が譲受人に承継されない債務の債権者を害することを知って営業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受人に対して、承継した財産の価額を限度として、債務の履行を請求できます。
商業使用人
商業使用人とは、雇用契約によって特定の商人に従属し、その業務を補助する人です。
商業使用人は、その権限の広い順に、
- 支配人
- ある種類または特定の事項の委任を受けた使用人
- 物品販売等を目的とする店舗の使用人
に分類されます。
支配人
支配人とは何か
支配人とは、商人の営業所の営業の主任者として選任された者です。
支配人の権限
包括的代理権 | 支配人は、商人に代わって営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する |
使用人の 選任・解任権 | 支配人は、他の使用人を選任しまたは解任することができる |
支配人の義務
支配人は、雇用及び委任の規定に基づき、善管注意義務、報告義務当の一般的義務を負います。また、支配人は、商人の許可を受けなければ、以下の行為をすることができません。これを競業避止義務、精力分散防止義務といいます。
- 自ら営業を行うこと
- 自己または第三者のために商人の営業の部類に属する取引をすること
- 他の商人・会社・外国会社の使用人となること
- 会社の取締役・執行役・業務執行役員となること
表見支配人
表見支配人とは、商人の営業のの主任者であることを示す名称を付した使用人です。
表見支配人は、営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなされますが、相手方が悪意であったときは、この限りではありません。
ある種類または特定の事項の委任を受けた使用人
商人の営業に関するある種類または特定の事項の委任を受けた使用人は、一切の裁判外の行為をする権限を有します。
この代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗できません。
物品販売等を目的とする店舗の使用人
物品販売等を目的とする店舗の使用人は、相手方が悪意の場合を除き、店舗にある物品の販売をする権限を有するものとみなされます。
代理商
代理商とは何か
代理商とは、営業使用人ではないものの、一定の商人のために平常その営業の部類に属する取引の代理または媒介をなす人です。
代理商は、商業使用人のように本人に対して従属関係に立つことなく、委任契約に基づく独立の商人として代理または媒介の委任を受ける者です。
代理商の義務
代理商は、商人の許可を受けなければ、以下の行為をすることができません。
代理商の負う義務は、支配人が負う義務よりも範囲が狭くなっていますが、支配人が承認に従属すべき立場にあるのに対して、代理商は独立の商人だからです。
商人の許可を要する代理商の行為
- 自己または第三者のために商人の営業の部類に属する取引をすること
- 商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役・執行役・業務執行社員となること
支配人 | 代理商 | |
資格 | 自然人 | 法人でも良い |
商人との関係 | 雇用契約 | 委任 |
代理権 | 授与しないこともできる | |
競業避止義務 | 負う | 負う |
精力分布防止義務 | 負う | 負わない |
それではまた次回。
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