今回は、責任財産の保全を学習するわ!
頻出分野だモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「債権:責任財産の保全」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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債権者代位権
債権者代位権とは何か
Aは、Bに対して100万円の貸金債権を有しており、BはCに対して100万円の貸金債権を有していた。Bは、無資力であるにもかかわらず、Cに対して100万円の請求をしないので、AはBに代わって、Cに対して100万円の支払いを請求した。
債務者Bが自らの権利を行使しないとき(ボーとしている)に、債権者Aが債務者に代わってその権利を行使することを、債権者代位権といいます。
債権者代位権の趣旨は、強制執行の準備のために債務者の責任財産を保全する点にあります。
要件
債権保全の必要性
債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(被代位権利)を行使できるとされており、債権保全の必要性が要件とされています。
債権保全の必要性とは、債務者が無資力であることを意味します。
もっとも、債権者代位権の転用の場合は、債務者の無資力は要件ではありません。
被代位権が債務者の一身専属権および差押さえを禁じられた権利ではないこと
債務者の一身専属権および差押さえを禁じられた権利は、債権者代位権の対象とはなりません。
債権の履行期の到来
債権者は、債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使できません。
ただし、保存行為(時効の完成猶予など)はこの限りではありません。
債務者が権利を行使していないこと
債権者代位権を行使するためには、債務者自らが自己の権利を行使していないことが必要です。
なぜなら、本来債権者だけが自由にできる権利行使に債権者が干渉する以上、その干渉は必要最低限に限られるべきだからです。
行使方法
権利行使の名義
代位債権者は、債務者の代理人的な地位に立つわけではなく、自己の名で権利行使できます。
代位行使の範囲
代位債権者は、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権額の範囲においてのみ被代位権利を行使できます。
債権者代位権は債権の保存のために例外的に認められる制度であって、債務者の財産的自由を制約するものである以上、代位権行使の範囲も必要最低限の範囲に限られるべきだからです。
請求の内容
請求の内容は、どのような権利を代位行使するかによって、以下のように異なってきます。
債権者代位権に基づく請求の内容
金銭債権・動産の引渡請求権 | 直接自己への給付を請求できる |
賃貸人の妨害排除請求権 | 直接自己に対して明渡しを請求できる |
所有権移転登記請求権 | 債務者名義への移転登記請求のみできて、直接自己名義への移転登記請求はできない |
効果
債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をできますし、第三債務者も、被代位権利について債務者に対して履行できます。
詐害行為取消権
詐害行為取消権とは何か
Aは、Bに対して100万円の貸金債権を有していた。Bは、Cに対して100万円を贈与したことにより無資力となったので、AはBC間の贈与を取り消した。
債務者が積極的に自己の財産を減少させるような行為(詐害行為)をしたときに、これを取り消す権利を詐害行為取消権といいます。
詐害行為取消権の趣旨は、債権者代位権と同様、強制執行の準備のために債務者の責任財産を保全する点にあります。
要件
被保全債権が金銭債権であること
詐害行為取消権の趣旨が責任財産の保全にあることから、被保全債権は金銭債権でなければならないのが原則です。
しかし、特定物引渡請求権も損害賠償請求権に代わり得るものですから、特定物引渡請求権を有する者も、目的物を債務者が処分したことで無資力となった場合には、処分行為を詐害行為として取り消しできます。
被保全債権の発生原因が詐害行為前に生じたものであること
債務者は、被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、詐害行為取消請求をできます。
したがって、詐害行為と主張される不動産の譲渡行為が債権者の債権成立前にされたものである場合には、たとえその登記が債権成立後にされたときであっても、詐害行為取消権を請求できません。
債権者を害する行為であること
詐害行為取消請求の対象となるのは「債権者を害する」行為とされており、これは当該行為により債務者が無資力になることを意味します。
なお、一部の債権者への担保の供与または債務の消滅に関する行為は、原則として詐害行為に当たりませんが、債務者が支払不能のときに、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもって行われた場合には詐害行為となります。
財産権を目的としない行為ではないこと
「財産権を目的としない行為」は、詐害行為取消請求の対象とはなりません。
詐害行為取消請求権は、債務者の責任財産の保全を目的とする制度だからです。
詐害行為取消請求の対象
対象となる | 対象とならない |
・遺産分割協議 | ・相続の放棄 ・離婚に伴う財産分与* |
債務者が債権者を害することを知っていたこと
詐害行為取消請求をするためには、債務者の行為が債権者を害することを知ってなされたことが必要です。
受益者がその行為のときにおいて債務者を害すべき事実を知っていたこと
詐害行為取消請求は、受益者がその行為のときにおいて債権者を害すべき事実を知っていたときに限り、請求できます。
すべての転得者がそれぞれの天徳寺において債権者を害すべき事実を知っていたこと
転得者を相手方とする場合、すべての転倒者がそれぞれの転得時において債権者を害すべき事実を知っていたときに限り、詐害行為取消権を請求できます。
行使方法
詐害行為取消請求は、債権代位権とは異なり、裁判所に請求しなければなりません。
個人間の法律行為を取り消すというのは重大な効果であり、第三者にも影響が及ぶので、要件充足の有無を裁判所に判断させる必要があるからです。
出訴期間
詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを、債権者が知ったとときから2年を経過したときは提起できません。
また、詐害行為のときから10年を経過したときも同様です。
効果
詐害行為取消請求の被告
詐害行使取消請求に係る訴えは、債務者ではなく、受益者または転得者を被告としなければなりません。
取消の範囲
詐害行為の取消の範囲は、以下の通りです。
金銭の処分 | 目的物が可分の場合、自己の債権の限度においてのみ取り消せる |
金銭以外の処分 | 目的物が不可分な建物であるときは、建物の価額が債権額を超える場合でも、 債権者は行為の全部を取り消せる |
取消の内容
債権者は、原則として財産の返還を請求できますが、財産の返還が困難であるときは、価額の償還を請求できます。
直接自己に対する返還請求の可否
不動産 | 直接自己に対する所有権移転登記手続を請求できない |
金銭・動産 | 直接自己への引渡を請求できる |
取消の効果
詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者およびすべての債権者に対しても効力を生じます。
したがって、債権者は自己の債権について、詐害行為として取消たとしても、受益者から取り戻した財産から他の債権者に優先して弁済を受けられません。
債権者代位権と詐害行為取消権のまとめ
債権者代位権 | 詐害行為取消権 | |
被保全債権 | ・原則弁済期 ・代位目的たる債権より前に成立ことは不要 | ・弁済期であることは不要 ・詐害行為の目に成立したことが必要 |
行使方法 | 裁判外でも行使できる | 裁判上の行使が必要 |
期間制限 | なし | 債務者が債権者を害することを 知って行為をしたことを債権者が 知ったときから2年、行為時から10年 |
それではまた次回。
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