今回は、契約以外の債権発生原因を学習するわ!
「事務管理」「不当利得」「不法行為」だモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「債権:契約以外の債権発生原因」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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事務管理
事務管理とは何か
事務管理とは、義務がないにもかかわらず他人のために事務を管理することです。
そして管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人ん対し、その償還を請求できます。
契約と同じように、事務管理も債権発生原因となります。
事務管理制度の趣旨は、社会生活を営む上では相互に助け合うことが要請されるため、他人の生活への干渉を適法と認める点です。
要件
法律上の義務の不存在
契約があれば事務の管理は契約上の債務となりますし、親権のような法律上の地位があれば法律の規定に基づいて他人の事務を管理する義務が生じるので、事務管理にはなりません。
他人のためにする意思
事務管理が成立するためには、他人のためにする意思が必要です。
「他人のためにする意思」は、自己のためにする意思が存在していても認められます。
他人の事務の管理
事務管理の対象となる事務は、法律行為でも事実行為でもかまいません。
本人の意思および利益への適合
管理者は、事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、事務管理をしなければなりません。
また管理者は、本人の意思を知っているとき、または推知できるときは、その意思に従って事務管理をしなければなりません。
効果
管理者の義務
管理者は、本人の身体・名誉・財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意または重過失があるのでなければ、事務管理によって生じた損害を賠償する責任を負いません(緊急事務管理)。
また管理者は、本人またはその相続人もしくは法定代理人が管理をできるに至るまで、事務管理を継続しなければなりません。
ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、または本人に不利であることが明らかであるときは、管理を継続してはなりません。
本人の義務
管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、償還を請求できます。
また、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合、本人に対し、自己に代わって弁済をすることを請求できます。
しかし、管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、これらの請求ができる範囲は本人が現に利益を受けている程度に限定されます(現存利益)。
不当利得
不当利得とは何か
不当利得とは、法律上の原因なく他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼすことです。
不当利得を受けている者は、返還する義務を負います。
不当利得も、契約と同様に債権発生原因となります。
不当利得制度の趣旨は、形式的には正当とされる財産的価値の移動が実質的には正当とされない場合に、公平の理念に従って調整することです。
要件
不当利得の成立要件は、以下の4つです。
不当利得の成立要件
- 受益者が利益を受けたこと
- 他人に損失を与えたこと
- 利益と損失に因果関係があること
- 法律上の原因がないこと
効果
善意の受益者は、利益の存する限度において返還する義務を負います(現存利益)。
対して悪意の受益者は、受けた利益に利息を付けて返還しなければならず、なお損害があるときは、賠償の責任を負います。
不当利得の特則
法政策上の判断により、本来なら成立するはずの不当利得返還請求権が成立しない場合があります(不当利得の特則)。
非債弁済
債務の弁済として給付した者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、給付したものの返還を請求できません(非債弁済)。
期限前の弁済
債務者は、弁済期にない債務の弁済として周布をしたときは、給付したものの返還を請求できません。
なぜなら、弁済受領者は期限の利益の放棄がなされたと思って受領した物を処分してしまうのが通常であり、これを返還させるのは酷だからです。
ただし、債務者が錯誤によって給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければなりません。
他人の債務の弁済
債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合、弁済者は給付した物の返還を請求できるのが原則です。
もっとも、債権者が善意で証書を滅失させもしくは損傷し、担保を放棄し、または時効によってその債権を失ったときは、弁済をした者は、返還の請求をできません。
不法原因給付
不法な原因のために給付をした者は、給付したものの返還を請求できません(不法原因給付)。
給付の意味
未登記建物 | 引渡し |
既登記建物 | 所有権移転登記 |
抵当権設定登記 | 給付に当たらない |
なお、不法な原因が受益者についてのみ損したときは、給付したものの返還を請求できます。
不法行為
不法行為とは何か
不法行為とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害し、これによって損害を生じさせることです。
不法行為を行ったものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。
不法行為制度の趣旨
- 被害者の救済
- 損害の公平な分担
- 将来の不法行為の抑止
不法行為は、一般不法行為と特殊不法行為に分類されます。
不法行為
一般不法行為 | 故意または過失に基づく原則的な不法行為責任 |
特殊不法行為 | 一般不法行為の原則を、過失の立証責任を転換したり、 無過失責任を課すなどの方法で修正するもの |
一般不法行為
一般不法行為の要件は、以下の5つです。
- 加害者に故意または過失行為があること
- 権利法律上保護される利益の侵害(違法性)があること
- 損害が発生していること
- 因果関係が存在すること
- 加害者に責任能力があること
違法性阻却事由のうち明文で認められたものとして、正当防衛と緊急避難があります。
- 他人の不法行為に対し
- 自己または第三者の権利または法律上保護される利益を防衛するため
- やむを得ず不法行為者または第三者に対して加害行為をしたこと
- 行為の違法性が阻却され、損害賠償責任を負わない
- 第三者から不法行為者に対して損害賠償請求をすることができる
- 他人の物から生じた急迫の危難に対し
- これを避けるため
- その物を損傷したこと
- 行為の違法性が阻却され、損害賠償責任を負わない
特殊不法行為
監督義務者の責任
責任無能力者が責任を負わない場合、その責任無能力者を監督する決定の義務を負う監督義務者が、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負います。
もっとも、監督義務者が義務を怠らなかったとき、または義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、免責されます。
使用者責任
事業のために他人を使用する者は、被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(使用者責任)。
趣旨は、使用者が被用者を使用して自己の活動範囲を広げるという利益を得ている以上、被用者が生じさせた損害についても責任を負うべきという点にあります。
もっとも、使用者が被用者の選任および事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、免責されます。
なお、使用者または監督者は、被用者に対して求償できます。
注文者の責任
注文者は、注文または指図について過失があったときを除き、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負いません。
請負契約は、通常の使用関係よりも独立性が強いからです。
工作物責任
土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、工作物の占有者は、被害者に対して損害を賠償する責任を負います(工作物責任)。
もっとも、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、免責されます。
そして、占有者が免責された場合、所有者が二次的責任を負います。
この場合所有者は、占有者と異なり、損害の発生を防止するのに必要な注意をしても免責が認められません。
なお、損害の発生について他に責任を負うものがあるときは、占有者または所有者は、その者に対して求償権を行使できます。
動物占有者の責任
動物の占有者は、動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います。
もっとも、動物の種類・性質に従い相当の注意をもって管理をしたときは、免責されます。
共同不法行為
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯して損害を賠償する責任を負います(共同不法行為)。
趣旨は、各自に連帯責任を負わせることで、被害者の救済を図る点にあります。
共同不法行為
- 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたとき
- 共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないとき
- 教唆者・幇助者がいるとき
共同不法行為者間には、過失の割合(負担部分)に応じた求償が認められます。
不法行為の効果
金銭賠償の原則
不法行為が成立すると、被害者は、加害者に対して損害賠償請求ができます。
損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定めます。
もっとも、他人の名誉を棄損した者に対しては、裁判所は、被告者の請求により損害賠償に代えて、または損害賠償とともに名誉を回復するのに適当な処分をできます。
損害賠償請求権者
まず被害者本人は、損害賠償を請求できます。
そして胎児は、損害賠償の請求権については、すでに生まれたものとみなされます。
次に、被害者本人が死亡した場合、被害者の父母・配偶者および子は、損害賠償(慰謝料)を請求できます。
また、損害賠償請求権や慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、当然に相続の対象となります。
損益相殺
損益相殺とは、不法行為と同一の原因によって被害者が利益を受けている場合に、これを加害者の賠償すべき損害額から差し引くことです。
損益相殺は、損害の公平な分担という不法行為制度の趣旨から認められています。
損益相殺
認められる | 認められない |
・死亡者の生活費 ・給付されることが確定した遺族年金 | ・死亡者に支払われた生命保険金 ・死亡した幼児の養育費 |
過失相殺
被害者にも過失があったときは、裁判所は、損害賠償の額を定めることができます(過失相殺)。
趣旨は、不法行為により生じた損害を加害者と被害者の間で公平に分担する点にあります。
そして、過失相殺の対象となる被害者の過失は、被害者本人と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失を含みます。
また、損害の発生や拡大に寄与した被害者の精神的・肉体的要因(被害者の素因)についても、722条2項の規定が類推適用されることがあります。
被害者の素因
過失相殺の対象となる | 対象とならない |
・被害者の心因的要因が寄与している場合 ・被害者の身体的要因が疾患に当たる場合 | ・被害者が平均的な体格や通常の体質と異なる身体的特徴を有しているが、それが疾患に当たらない場合 |
損害賠償請求権の期間制限
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときや、不法行為の時から20年間行使しないときは、時効によって消滅します。
趣旨は、長期間経過すると不法行為の立証が難しくなるため、早期に決着を付けさせる点にあります。
消滅時効
債務不履行 | 不法行為 | |||
主観的期間 | 客観的期間 | 主観的期間 | 客観的期間 | |
通常 | 5年 | 10年 | 3年 | 20年 |
生命・身体侵害 | 5年 | 20年 | 5年 | 20年 |
債務不履行と不法行為
債務不履行 | 不法行為 | |
立証責任 | 債務者 | 被害者 |
履行遅滞 | 債権者から履行の請求を受けた時 | 不法行為の時 |
過失相殺 | 免責・減額 | 減額のみ |
それではまた次回。
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