今回は、多数当事者の債権・債務を学習するわ!
条文をしっかりと押さえるモン。
本ブログでは、行政書士の試験科目「債権:多数当事者の債権・債務」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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分割債権・債務
債権者または債務者のいずれか一方が複数である債権・債務関係については、平等の割合で分割される分割債権または分割債務が原則とされています。
不可分債権・債務
債務の目的が性質上不可分である場合には、分割債務とはならず、債権者は、債務者のうちの1人に対してすべての履行を請求できます(不可分債務)。
債権者側が複数の場合は、不可分債権となります。
不可分債権と不可分債務
不可分債権 | 不可分債務 | |
具体例 | ・共有物の所有権に基づく共有物返還請求権 ・共同賃貸人の賃借人に対する賃料債権 | ・共有物の引渡債務 ・共同して賃借した 不動産の賃料支払い債務 |
対外的効力 | 各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行できる | 1人に対し、または同時にもしくは順次にすべての債務者に対し、履行を請求できる |
絶対効 | 請求・相殺・弁済 | 更改・相殺・弁済 |
連帯債権
連帯債権とは何か
A・B・Cは、3人で共同してDに対して300万円を貸し付け、その際に3人の債権は連帯債権とする特約がなされた。
連帯債権は、数人の債権者が同一内容の給付について、各自が独立にすべての給付を請求できる債権を有し、そのうちの1人が給付を受ければ他の債権者の債権もすべて消滅する多数当事者の債権です。
上図のA・B・C3人は、それぞれ100万円ずつの債権を有しているのではなく、それぞれ300万円全額の債権を有することになります。
そして、DがA・B・Cのうち1人に対して300万円を支払えば、他の2人の債権も消滅します。
連帯債権の性質
数人が連帯債権を有するときは、各債権者は、すべての債権者のために全部または一部の履行を請求することができ、債務者は、すべての債権者のために各債権者に対して履行できます。
連帯債権者の1人に生じた事由
連帯債権者の1人について生じた事由は、他の連帯債権者に対して効力を生じないのが原則です(相対的効力)。
しかし、弁済・代物弁済・供託・更改・免除・相殺・混同・履行請求は、例外として他の連帯債権者にたいしても効力を生じます(絶対的効力)。
連帯債務
連帯債務とは何か
A・B・Cは、3人で共同してDから300万円を借り入れ、その際に3人の債務は連帯債務とする特約がなされた。
連帯債務は、数人の債務者が同一内容の給付について、各自が独立にすべての給付をなすべき債務を負担し、そのうちの1人の給付があれば他の債務者の債務もすべて消滅する多数当事者の債務です。
上図のA・B・C3人は、それぞれ100万円ずつの債務を負うのではなく、それぞれ300万円全額の債務を負います。
そして、3人のうち1人が300万円を支払えば、他の2人の債務も消滅します。
負担部分は、各債務者が最終的に負担する額です。
上図では、負担部分は平等とされているので、A・B・C3人の負担部分はそれぞれ100万円ずつとなります。
したがって、Aが300万円を全額支払ったとしても、Aは最終的に100万円を負担すればよいので、B・C2人に対して100万円ずつの支払いを請求できます(求償権)。
連帯債務の性質
数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、連帯債務者の1人に対し、または同時もしくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求できます。
また、連帯債務者の1人について法律行為の無効または取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は有効となります。
連帯債務は、各債務者が別個独立の債務を負担するので、債務の成立原因も個別的に取り扱うのが当事者の意思に適するからです。
連帯債務者の1人に生じた事由
連帯債務者の1人に生じた事由は、他の連帯債務者に対して効力を生じないのが原則です(相対的効力)。
連帯債務の絶対効
債務のすべてに効力を生じる | 負担部分のみに効力を生じる |
・弁済(代物弁済) ・更改 ・相殺 ・混同 | ・他の債権者の反対債権による履行拒絶 |
求償関係
求償権
連帯債務者の1人が弁済したときは、その連帯債務者は、弁済額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分に応じた求償権を有します。
もっとも、連帯債務者の中に償還する資力がない者がいるときは、その償還できない部分は、求償者および他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担します。
通知を怠った連帯債務者の求償の制限
- 他の連帯債務者は、債権者に対抗できる事由(相殺など)を有していたときは、他の連帯債務者の負担部分について、債権者に対抗できる事由によって、弁済をした連帯債務者に対抗できます。
- 連帯債務者の1人が事前の通知を怠った場合、他の連帯債務者の債権者に対する対抗事由を保護する必要があるからです。
- 弁済をした連帯債務者は、自己の弁済を有効であったものとみなすことができます。
- 連帯債務者の1人が事後の通知を怠った場合、他の連帯債務者が二重に弁済させられることを防止する必要があるからです。
保証債務
保証債務とは何か
AがBから100万円を借り入れる際、BとCの間で、Aが100万円を返せなかった場合にはCが代わりに100万円を支払う旨の契約がなされた。
保証債務とは、債務者が債務を履行しない場合に、主債務者に代わって履行する債務です。
保証債務を負っている人を保証人といいます。
保証債務の法的性質
付従性
保証債務は主債務の存在を前提とし、主債務に従たる性質を有しています(付従性)。
したがって、主債務が成立しなければ保証債務も成立せず、また、主債務が消滅すれば保証債務も消滅します。
また、保証債務は、主債務に関する利息・違約金・損害金その他その債務に従たるすべてのものを包含します。
もっとも、保証人は保証債務についてのみ、違約金または損害賠償の額を約定(約束)できます。
随伴性
主債務が譲渡されると、保証債務も伴って譲渡されます(随伴性)。
補充性
保証人は、主債務が履行されないときに初めて自己の債務を履行する責任を負います(補充性)。
保証債務の補充性
債権者が保証人に履行の請求をしたときは、保証人は、主債務者に催告すべき旨を請求できる。
債務者が主債務者に催告をした後であっても、保証人が主債務者に弁済する資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主債務者の財産について執行しなければならない。
保証債務の成立
保証契約
保証債務は、保証人と債権者との保証契約によって成立します。
保証契約は、書面でしなければ効力を生じません。
趣旨は、安易に保証契約を成立させないようにする点にあります。
保証人の資格
通常、保証人となるためには別段資格を要しませんから、制限行為能力者でも保証人になれます。
しかし、債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、保証人は、「行為能力者」「弁済をする資力」を有する必要があります。
主債務の存在
主債務が行為能力の制限を理由に取り消された場合、付従性から債務保証も消滅します。
もっとも、保証人が保証契約のときに、その取消しの原因を知っていたときは、主債務と同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定されます。
保証人の求償権
保証人は主債務者が負う債務の最終的な負担者ではないので、保証人が保証債務を履行した場合、主債務者に対して求償権を取得します。
- 弁済前の求償権=あり
- 弁済後の求償権=あり
- 弁済があった日以後の、法定利息および避けることができなかった費用その他の損害の賠償も含まれる
- 弁済前の求償権=なし
- 弁済後の求償権=あり
- 主債務者が弁済の当時に利益を受けた限度
- 弁済前の求償権=なし
- 弁済後の求償権=あり
- 求償の時点での現存利益の限度
特殊な保証形態
連帯保証
連帯保証とは、保証人が主債務者と連帯して債務を負担する旨合意した保証です。
連帯保証も補償債務の一種であり主債務に付従するので、付従性から生ずる効果は通常の保証債務と同様となります。
もっとも、連帯保証には、通常の保証とは異なり補充性がありません。
したがって、連帯保証人は、催告の抗弁権・検索の抗弁権を有しません。
主債務者と保証人に生じた事由の効力
通常保証 | 連帯保証 | |
主債務者に生じた事由 | 保証人に対して効力生じる | 保証人に対して効力生じる |
保証人に生じた事由 弁済・相殺・更改 | 主債務者に対して効力生じる | 主債務者に対して効力生じる |
保証人に生じた事由 混同 | 主債務者に対して効力生じない | 主債務者に対して効力生じる |
保証人に生じたその他の事由 | 主債務者に対して効力生じない | 主債務者に対して効力生じない |
共同保証
共同保証とは、同一の主たる債務について数人の保証人がいる保証です。
共同保証の場合、各保証人は、債権者に対しては平等の割合をもって分割された額についてのみ、保証債務を負担します(分別の利益)。
共同保証人の1人が、全額または自己の負担部分を超える額を弁済したときは、他の共同保証人に対して求償権を有します。
根保証
根保証は、一定の範囲に属する不特定の債務を主債務とする保証です。
根保証のうち、保証人が自然人であるものを個人根保証契約といい、極度額を定めなければ効力を生じません。
保証人が法人の場合は、個人根保証契約ではないので、極度額の定めは不要です。
保証人の保護の拡充
債権者の情報提供義務
保証人は主債務者の履行状況を常に知り得るわけではないため、保証契約締結後も保証人を保護するべく、債権者に主債務の履行状況について情報提供義務を課しました。
情報提供義務の対象は、委託を受けた保証人のみです。
事業用融資における個人補償の制限
金融機関による中小企業への融資の際、経営者の親族・友人など第三者の個人保証を求めることが多いところ、事業者融資は相当程度高額になるため、保証責任の追及を受けた個人が生活破綻に陥ることが多かったことから、個人保証を制限する規定が設けられました。
すなわち、事業のために負担した貸金等債務を主債務とする保証契約または主債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、効力を生じません。
それではまた次回。
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