民法の学習開始だわ!
まずは総則から始めるモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「総論・権利の主体・客体」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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権利能力
権利能力とは何か
権利能力とは、権利・義務の帰属主体となれる資格のことです。
権利能力を有するのは、自然人と法人です。
胎児の権利能力
原則
私権の享有は、出生に始まると規定されています。
したがって、人は生まれながらにして権利能力を有していますが、胎児は権利能力を有していないことになります。
例外
胎児は、不法行為に基く損害賠償請求、相続、遺贈については、生まれたものとみなされます。
「生まれたものとみなす」とは、胎児中に権利能力を取得するわけではなく、生きて生まれた場合に、さかのぼって権利能力を取得するという意味です(停止条件説)。
したがって、法定代理人が出生前に胎児を代理することはできません。
失踪宣告
失踪宣告とは何か
権利能力は、死亡によって失われます。
したがって、行方不明になったにすぎない場合は、権利能力は失われません。
そこで、ある人の生死不明の状態が継続した場合、その人を死亡したものとして取り扱って、財産を相続させるなどして利害関係人の保護を図ります(失踪宣告)。
種類
失踪宣告には、普通失踪と特別失踪があります。
普通失踪と特別失踪
要件 | 効果 | |
普通失踪 | ・不在者の生死が7年間明らかではない ・利害関係人*の請求がある | 7年の期間が終了した時に死亡したとみなされる |
特別失踪 | ・危難に遭遇した者の生死が危難が去った後1年間不明 ・利害関係人*の請求がある | 危難が去った時に死亡したとみなされる |
効果
失踪宣告がなされると、私法上の法律関係については、死亡したものと同じ扱いがなされます。
もっとも、実際に本人が死亡したわけではないので、本人は権利能力を喪失するわけではありません。
失踪宣告の取消し
失踪者が生存すること、または死亡したとみなされた時と異なる時に死亡したとの証明があったときは、家裁は本人または利害関係人の請求により、失踪宣告を取り消さないといけません。
失踪宣告の取消しがなされると、失踪宣告は最初からなかったものとして扱われます。
しかしそれでは、失踪宣告を前提に行動した者の利益を害するので、失踪宣告の取消しは、失踪宣告後その取消し前に善意でした行為の効力には影響を及ぼしません。
また、失踪宣告によって善意で財産を得た者は、その取消しによって権利を失いますが、財産の返還義務は現に利益を得ている限度(現存利益)に限定されます。
意思能力
意思能力とは、自分の行為の結果を判断できる精神的能力です。
そして、意思能力を有していない人を意思無能力者(泥酔者・乳幼児など)といいます。
意思無能力者の行った行為は無効とされます。
このように、意思無能力者の行為を無効とすることで、意思無能力者が思わぬ損をしないようにしています。
行為能力
行為能力とは、法律行為(売買契約など)を自ら単独で有効に行う能力です。
法律行為が自分にとって有利か否かを判断する能力を有しない者については、保護のために行為を制限する必要があります(制限行為能力者)。
制限行為能力者には、「未成年者」「成年被後見人」「被保佐人」「被補助人」の4つがあります。
未成年者
保護者
未成年者の判断能力の不十分さを補うために、未成年者には保護者が付けられます。
未成年者の保護者は、法の定めるところにより未成年者を代理して法律行為を行う権限を有しているため、法定代理人と呼ばれます。
保護者の権限
- 【同意権】制限行為能力者が単独で行為をできるように同意をする権限
- 【代理権】制限行為能力者に代わって行為を行う権限
- 【取消権】制限行為能力者が単独でした行為を取り消す権利
- 【追認権】制限行為能力者が単独で行った行為を有効と確定する権限
行為能力
未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければなりません。
そして、法定代理人の同意を得ないでした法律行為は取り消せます。
もっとも、以下の3つの行為は、未成年でも単独で行えます。
- 単に権利を得、または義務を免れる行為
- 法定代理人が処分を許した財産の処分(おこづかいなど)
- 許された営業に関する行為
成年被後見人
成年被後見人とは何か
成年被後見人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるとして、家裁による後見開始の審判を受けた者です。
保護者
成年被後見人には、保護者として、成年後見人が付きます。
行為能力
成年被後見人の法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、取り消せます。
なお、成年後見人には同意権がありません。
被保佐人
被保佐人とは何か
被保佐人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であるとして、家裁による保佐開始の審判を受けた者です。
保護者
被保佐人には、保護者として保佐人が付きます。
保佐人は、代理権を当然に有するわけではなく、家裁は、本人や保佐人等の請求によって、代理権を付ける審判をすることができます。
ただし、本人以外の者の請求によって代理権を付ける審判をするには、本人の同意が必要です。
行為能力
被保佐人が以下の行為をするには、保佐人の同意を得なければなりません。
- 元本の領収・利用
- 借財・保証
- 不動産その他重要な財産の関する権利の得喪を目的とする行為
- 訴訟行為
- 贈与・和解・仲裁合意
- 相続の承認・放棄、遺産の分割
- 贈与の申込の拒絶、遺贈の放棄、負担付き贈与の承認、負担付遺贈の承認
- 新築・改築・増築・大修繕
- 602条に定める期間を超える賃貸借
- 1~9の行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること
保佐人の同意を得なけらばならない行為であって、その同意を得ないでしたものは、取り消せます。
被補助人
被補助人とは何か
被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分であるとして、家裁による補助開始の審判を受けた者です。
保護者
被補助人には、保護者として補助人が付きます。
補助人は、同意権や代理権を当然に有するわけではなく、補助開始の審判をする際に、同意権付与の審判・代理権付与の審判のいずれかor双方がなされます。
同意権付与の審判がなされた場合、補助人は、被補助人に同意を与える権利を有しますが、同意を得なければならないものは、13条1項に規定する行為の一部に限られます。
行為能力
補助人に代理権のみが付与された場合、被補助人の行為能力は制限されません。
これに対して、補助人に同意権が付与された場合、補助人の同意を得なければならない行為であって、同意を得ないでしたものは、取り消せます。
保護者 | 同意権 | 代理権 | 取消権 | 追認権 | |
未成年者 | 法定代理人 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
成年被後見人 | 成年後見人 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
被保佐人 | 保佐人 | 〇 | △ | 〇 | 〇 |
被補助人 | 補助人 | △ | △ | △ | △ |
審判相互の関係
後見・保佐・補助の制度が重複することを、避ける必要があります。
制限行為能力者の相手方の保護
制限行為能力者の相手方からすれば、有効だと思っていた法律行為が意思とは関係なく取り消されることになり、取引の安全を害します。
そこで、制限行為能力者の相手方を保護するための制度が設けられています。
相手方の催告権
制限行為能力者の相手方が不安定な立場に置かれるのを防止するため、相手方の催告権が認められています。
相手方は、1か月以上の期間を定めて催告することができます。
相手方に催告権
制限行為能力者の詐術
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことはできません。
制限行為能力者が積極的に行為能力者であると偽った場合、制限行為能力者よりも相手方を保護すべきだからです。
法人
権利能力なき社団
権利能力なき社団とは何か
権利能力なき社団とは、法人のような実体を有しているものの、法律の規定により権利をもつことができない社団のことです。
権利能力なき社団の成立要因
- 団体としての組織を備えている
- 多数決の原則が行われている
- 構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続する
- 組織によって代表の方法、総会の運営など団体としての要点が確定している
権利と義務の帰属
権利能力なき社団の財産は、構成員に総有的に帰属するものと解されており、構成員は、権利能力なき社団の財産に対する持分権や分割請求権を有しません。
また、権利権力なき社団の債務も、構成員に総有的に帰属すると解されており、構成員は債権者に対して個人的責任を負いません。
登記名義
権利能力なき社団が取得した不動産については、社団名義の登記や社団の代表者の肩書を付けた代表者名義の登記をすることはできず、社団の代表者が構成員全員の受託者としての地位において個人名義で登記します。
組合契約
組合契約とは何か
組合契約とは、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約束する契約です。
権利と義務の帰属
組合の財産は、総組合員の共有に属するとされており、組合員は、組合の財産に対する持分権を有していますが、精算前の分割請求権を有していません。
他方、組合の債務については、組合員が損失分担の割合または等しい割合に応じて個人的責任を負い、債権者が債権発生時に損失分担の割合を知っていたときは、各組合員は、その割合で個人的責任を負います。
組合の業務執行
組合の業務執行
業務執行者を定めていない | 業務執行者を定めている | |
常務の執行 | 各組合員が単独で行える | 各業務執行者が単独で行える |
常務以外の業務の執行 | 組合員の過半数で決する | 業務執行者の過半数で決する |
組合の脱退
組合の脱退
存続期間を定めていない(任意) | 存続期間を定めている(任意) | 法定の脱退自由 |
・組合に不利な時期を除いていつでも脱退可能 ・やむを得ない事由があれば組合に不利な時期でも脱退可能 | やむ得ない事由がある場合 | ・死亡 ・破産手続き ・後見開始 ・除名 |
物(ぶつ)
物とは何か
民法上の権利の客体は物です。
物とは有体物(目に見えるもの)をいいます。
不動産と動産
不動産とは、土地およびその定着物(建物や立木)のことです。
不動産以外の物を動産といいます。
手物と従物
物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに付随させた場合、その付属させた物を従物といい、本体となる物を主物といいます。
主物と従物は別個独立の物ですが、従物は主物の効用を助けるものであり法律関係を共にすることが合理的ですから、従物は主物の処分に従うものとされています。
果実
果実とは、元物から生じる収益です。
果実には、天然果実と法定果実があります。
意味 | 取得者 | |
天然果実 | 物の用法に従って収取する産出物(果物・牛乳) | 元物から分離する時に収取権を有する者 |
法定果実 | 物の使用の対価として受ける金銭等(地代・賃料) | 収取権存続期間に従って日割りをもって取得 |
それではまた次回。
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