時効について、正確に理解しておかないといけないわ。
取得時効と消滅時効についてしっかりと理解するモン。
本ブログでは、宅建士の試験科目「権利関係の時効」について要約しています。
宅地建物取引士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、宅地建物取引士を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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- 2015年より金融系ブログ作成
- ほったらかし投資が座右の銘
時効制度
「もう時効だよ」というセリフはよく聞きますが、時効は奥深いものです。
時効制度とは
時効の定義は、「時の経過によって権利関係に変化が生じること」です。
時効には以下の2つがあります。
- 【取得時効】時間が経つと手に入る
- 【消滅時効】時間が経つと失う
取得時効
「取得時効」は、物を一定期間継続して占有するとその物の権利を取得できる制度です。
すなわち、長い間他人の物を持っていると自分の物になるということです。
- 所有の意思をもって(自分の物と思って)、平穏かつ公然と占有を継続すること
- 占有開始時に善意無過失=10年間占有継続→所有権取得
- 占有開始時に善意有過失・悪意=20年間占有継続→所有権取得
取得時効は、「所有の意思をもって」なので、賃料を払いながら20年間住み続けても自分の物にはなりません。
賃料を支払っている時点で、所有の意思がないからです。
また、必ずしも自分で占有しなくてもいいです。
他人(下図のくまばあ)に賃貸していても、占有を継続していたことになります。
賃貸
途中で売買・相続した場合、占有の継承人(買った・相続した人)は、自己の占有のみを主張してもいいし、前主の占有をあわせて主張してもかまいません。
ただし、前主の占有をあわせる場合は、前主の「善意or悪意」も引き継ぐことになります。
売買・相続
また、占有の継承人(上図では息子)は、善意でも悪意でもかまわないです。
消滅時効
時間の経過によって、権利が消滅することを「消滅時効」といいます。
消滅時効
消滅時効の期間は、権利行使できるときから10年、もしくは知ったときから5年のうち、いづれか早い方になります。
消滅時効の期間
権利行使できるとき
- 確定期限付きの債務→期限が来たとき(来る日がわかっている)
- 不確定期限付きの債務→期限が来たとき(来る日がわからない)
- 停止条件付の債務→条件に達したとき(実現するとは限らない)
- 期限の定めのない債務→直ちに進行
所有権は消滅時効にかからないので、何年経過しても消滅しません。
たとえば、30年間使っていない別荘の所有者は、所有者のままです。
時効の遡及効
時効が完成すると、時効の効果は、時効の起算日(期間を数え始める最初の日)にさかのぼります。
時効の遡及効(そきゅうこう)
- 【取得時効】はじめから所有者にすれば不法占拠の事実がなくなる→損害賠償不要
- 【消滅時効】貸し借りが最初からなくなる→遅延損害金不要
時効の更新・時効の完成猶予
以前は、時効の更新=時効の中断、時効の完成猶予=時効の停止といわれていました。
時効の更新と完成猶予
時効の完成前に、それまでの時間経過をゼロに戻すことを「時効の更新」といいます。
また、一定期間、時効の完成を猶予(一時ストップ)させることを「時効の完成猶予」といいます。
- 【時効の更新】ゼロに戻す(リセット)
- 【時効の完成猶予】一時ストップ
完成猶予と更新の事由
以下の事由により、「時効の更新」「時効の完成猶予」が生じます。
- 訴えの提起によって「時効の完成猶予」が生じる
- 裁判が長引いても時効は完成しない
- 勝訴すれば時効は更新される
- 「取り下げ」「却下」の場合6か月間の完成猶予
- 6か月間の完成猶予の間に別の方法で時効を完成させないようにする
- 内容証明郵便などを出すなどして債務の履行を求める
- 通知を出すことで6か月間の「時効の完成猶予」が生じる
- 債務の一部を弁済(とりあえず一部を返す)
- 支払いの猶予を求める(もう少し待ってもらう)
- 承認の場合時効は更新される(時効の更新)
時効の援用・放棄
時効が完成したら、その時効を使っても良いし、使わなくても良いという状態になります。
時効の援用
時効の効果を発生させるには、援用が必要です。
時効の利益を受けるという意思表示を「時効の援用」といいます。
時効は、自動的に効力が生じるものではありません。
援用するという意思表示をしてから効力が生じます。
援用できる人は?
債務者や保証人などだモン。
時効の援用ができる人は、時効によって直接利益を受ける人のみです。
時効の利益の放棄
時効の利益を受けないという意思表示を、「時効の利益の放棄」といいます。
時効は完成したけれども、利益を受けない選択肢もあるのです。
ただし、「時効の利益の放棄」は、時効完成の前にはできません。
また、時効完成後に、債務者が時効の完成を知らずに承認した場合、「時効の援用」はできません。
それではまた次回。
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