今回は、取消訴訟以外の抗告訴訟を学習するわ!
それぞれの訴訟要件を、きちんと押さえるモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「行政事件訴訟法・取消訴訟以外の抗告訴訟」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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無効等確認訴訟
無効等確認訴訟とは何か
無効等確認訴訟とは、処分・裁決の存否またはその効力の有無の確認を求める訴訟です。
行政庁がなした行政作用が無効なものであったとしても、行政庁がそれに気付かずにさらに行政作用を続ける可能性があります。
そこで、このような事態を防止するため、裁判所に行政作用の無効を確認してもらうことができるとしたのが、無効等確認訴訟です。
無効等確認訴訟の訴訟要件
原告適格
無効等確認訴訟の原告適格は、
- 処分・裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者
- その処分・裁決の存否またはその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え(当事者訴訟・民事訴訟)
によって目的を達することができないものについて認められます。
その他の訴訟要件
無効等確認訴訟についても、処分性の要件を満たす必要があります。
また、被告適格、裁判管轄については、取消訴訟の規定が準用されます。
出訴期間については取消訴訟の規定が準用されないので、いつでも無効等確認訴訟を提起できます。
また、審査請求前置についても取消訴訟の規定が準用されていないので、審査請求前置を遵守していなくても、無効等確認訴訟を提起できます。
無効等確認訴訟の判決
無効等確認訴訟の対象である処分・裁決に無効原因となる瑕疵がある場合、認容裁決が下されることになり、無効原因となる瑕疵がない場合、棄却判決が下されることになります。
不作為の違法確認訴訟
不作為の違法確認訴訟とは何か
不作為の違法確認訴訟とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分・裁決をすべきであるにかかわらず、しないことについての違法の確認を求める訴訟です。
不作為の違法確認訴訟は、国民の申請に対して行政庁が不相当に長期にわたり諾否の決定をせず放置している場合に、申請の握り潰しという不作為状態の違法を確認することで、申請者の権利利益の保護及び行政の事務処理の促進を図るものです。
不作為の違法確認訴訟の訴訟要件
原告適格
不作為の違法確認訴訟の原告適格が認められるのは、処分・裁決についての申請をした者です。
その他の訴訟要件
被告適格、裁判管轄については、取消訴訟の規定が準用されます。
対して、出訴期間については取消訴訟の規定が準用されていないので、いつでも不作為の違法確認訴訟を提起できます。
義務付け訴訟
義務付け訴訟とは何か
不作為の違法確認訴訟は、申請に対して何らかの処分をすることを促すにとどまる消極的なものであり、救済手段としての効果は限定されています。
そこで、行政庁に対して一定の処分・裁決をすべき旨を命ずることを求める義務付け訴訟が法定されています。
義務付け訴訟には、
- 法令に基づく申請を前提としない非申請型
- 法令に基づく申請がされたことを前提に、申請者がその申請を満足させる行政庁の応答を求める申請型
があります。
行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらずこれがなされないときに、行政庁が処分・裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟
行政庁に対し一定の処分・裁決を求める旨の法令に基づく申請・審査請求がされた場合において、行政庁が処分・裁決をすべきであるにもかかわらずこれがなされないときに、行政庁が処分・裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟
義務付け訴訟の訴訟要件
義務付け訴訟の訴訟要件は、非申請型と申請型で以下のように異なっています。
義務付け訴訟の訴訟要件
非申請型 | 申請型 | |
要件 | ・一定の処分がなされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、その損害を避けるため他に適当な方法がないこと | ・法令に基づく申請・審査請求に対し、相当の期間内に何らの処分・裁決がなされないこと(不作為型) ・法令に基づく申請・審査請求を却下・棄却する旨の処分・裁決が取り消されるべきものであり、または無効・不存在であること(拒否処分型) |
原告適格 | ・行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者 | ・法令に基づく申請・審査請求をした者 |
併合提起 | ・不要 | ・不作為型の場合は不作為の違法確認訴訟 ・拒否処分型の場合は取消訴訟・無効等確認訴訟 |
被告適格、裁判管轄については、取消訴訟の規定が準用されます。
対して、出訴期間については取消訴訟の規定が準用されていません(取消訴訟を併合提起した場合は、取消訴訟が出訴期間の制限を受けます)。
義務付け訴訟の判決
義務付け判決がなされるのは、
- 行政庁が処分をすべきであることが、処分の根拠法令の規定から明らかであると認められるとき
(処分につき行政裁量が認められない場合) - 裁量権の逸脱・濫用となると認められるとき
(処分につき行政裁量が認められる場合)
です。
なお、申請型義務付け訴訟の場合、併合提起された訴訟に係る請求に理由があると認められることも必要です。
差止め訴訟
差止め訴訟とは何か
差止め訴訟とは、行政庁が一定の処分・裁決をすべきでないにもかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分・裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟です。
差止め訴訟は、公権力の行使による国民の権利利益の侵害を未然に防ぐために法定されたものです。
差止め訴訟の訴訟要件
一定の処分・裁決がされることにより重大な損害が生ずるおそれがあるときは、原則として、差止め訴訟を提起できます。
しかし、損害を避けるため他に適当な方法があるときは、差止め訴訟を提起できなくなります。
差止め訴訟を提起できるのは、行政庁が一定の処分・裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者です。
なお、被告適格、裁判管轄については、取消訴訟の規定が準用されます。
対して、出訴期間については取消訴訟の規定が準用されていないので、差止め訴訟は期間の制限なく提起できます。
最重要判例<<懲戒処分差止訴訟と義務不存在確認訴訟
最重要判例<<差止め訴訟の要件
差止め訴訟の判決
行政庁が処分・裁決をしてはならない旨を命ずる判決(差止め判決)がなされるのは、
- 行政庁が処分・裁決をしてはならないことが、処分の根拠法令の規定から明らかであると認められるとき
(処分につき行政裁量が認められない場合) - 裁量権の逸脱・濫用となると認められるとき
(処分につき行政裁量が認められる場合)
です。
それではまた次回。
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