今回は判例がとても多いわ!
判例をくり返し読んで覚えるモン。
本ブログでは、行政書士の試験科目「人権・幸福追求権及び法の下の平等」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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幸福追求権
幸福追求権とは
日本国憲法は、14条~40条で人権について規定していますが、個人が人格的に生存するために不可欠と考えられるものは、「新しい人権」として憲法上保障されます。
上記の根拠となる規定が、幸福追求権を定めた13条後段です。
新しい人権
幸福追求権を根拠として認められた新しい人権には、「肖像権」「プライバシー権」「自己決定権」などがあります。
環境権は新しい人権ではないわ。
嫌煙権も認められていないモン。
肖像権
肖像権とは、許可なく容貌・姿態を撮影されない権利です。
最高裁判所の判例は、憲法13条を根拠に実質的な肖像権を認めています(肖像権を認めると明言したわけではありません)。
<事案>
デモ行進に際し警察官が犯罪捜査の八女に行った写真撮影が、憲法13条に違反しないかが争われた。
<結論>
合憲
<判旨>
- 容ぼう等を撮影されない自由
何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼうを撮影されない自由を有するから、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し許されない。 - 撮影が許容される場合
犯罪を捜査することは公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の1つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるため、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれていても、これが許容される場合がありうる。具体的には、現に犯罪が行われ若しくは行われた後間がないと認められる場合であって、証拠保全の必要性及び緊急性があり、その撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法を持って行われるときは、例外的に撮影が許される。
プライバシー権
プライバシー権は、従来、「私生活をみだりに公開されない権利(消極的権利)」と定義されていましたが、現在では、積極的権利も加味して「自己に関する情報をコントロールする権利」と定義されています。
<事案>
弁護士が区役所に対して前科及び犯罪経歴を照会し、区役所がこれに応じたため、前科及び犯罪経歴を公開された者が、プライバシー侵害を理由に損害賠償を求めて争った。
<結論>
損害賠償請求は認められる。
<判旨>
前科等は、人の名誉・信用に直接かかわる事項であり、前科等のある者であっても、これをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する。したがって、市区町村長が漠然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類・軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な公使に当たる。
<事案>
ノンフィクション小説「逆転」で実名を掲載され前科を公表された者が、その作者に対して、プライバシー侵害を理由に損害賠償を求めて争った。
<結論>
損害賠償請求は認められる。
<判旨>
- 実名掲載の可否
ある者の前科等にかかわる事実は、刑事事件・刑事裁判という社会一般の関心・批判の対象となるべき事項にかかわるものであるから、事件それ自体を公表することに歴史的・社会的な意義が認められるような場合には、事件の当事者についても、その実名を明らかにすることが許されないとはいえない。 - 損害賠償請求の可否
ある者の前科等にかかわる事実を実名を使用して著作物で公表した場合、公表する理由よりも公表されない法的利益が優越するときには、公表された者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。
<事案>
外国人登録法により外国人登録原票などへの諮問押捺を義務付けられたことが、憲法13条に違反しないかが争われた。
<結論>
合憲
<判旨>
- 指紋とプライバシー
指紋は、性質上万人不同性、終生不変性をもつので、採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険性がある。 - 外国人の指紋押捺を強制されない自由
国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反して許されず、この自由の保障は、我が国に在留する外国人にも等しく及ぶ。 - 外国人登録法が定めていた指紋押捺制度の合憲性
外国人登録法が定めていた在留外国人についての指紋押捺制度は、その立法目的に十分な合理性があり、かつ、必要性も肯定できるものであり、方法としても一般的に許容される限度を超えない相当なものであったと認められる。
<事案>
早稲田大学が、外国国家主席の講演会を開催するに先立ち、参加者の学籍番号・指名・住所・電話番号を記入した名簿の写しを警察に提出したため、参加者がプライバシー侵害を理由に損害賠償請求を提起した。
<結論>
損害賠償請求は認められる。
<判旨>
- 講演会の参加申込者の学籍番号等の性質
大学が講演会の主催者として学生からの参加者を募る際に収集した参加申込者の学籍番号・指名・住所・電話番号は、大学が個人識別等を行うための単純な情報であって、その限りにおいては、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではない。 - 法的保護の有無
しかし、このような情報についても、本人が、自己が欲しない他者にみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきであるから、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。
<事案>
行政機関が住民基本台帳ネットワークシステムにより個人情報を収集・管理利用することは、憲法13条の保障するプライバシー権その他の人格権を違法に侵害するものではないかと争われた。
<結論>
合憲
<判旨>
- 個人情報を開示・公表されない自由
憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されることを規定しており、何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示または公表されない自由を有する。 - 本人確認情報の性質
いわゆる住基ネットによって管理・利用等される指名・生年月日・性別・住所からなる本人確認情報は、社会生活上は一定の範囲の他者には当然開示されることが想定され、個人の内面にかかわるような秘匿性の高い情報とはいえない。 - 住基ネットの適法性
住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上および行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。
また、住基ネットにおけるシステム技術上・法制度上の不備のために、本人確認情報が法令等の根拠に基づかずにまたは正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示・公表される具体的な危険が生じているということではない。 - 権利侵害の有無
いわゆる住基ネットにより行政機関が住民の本人確認情報を収集・管理・利用する行為は、当該住民がこれに同意していないとしても、憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。
自己決定権
自己決定権とは、個人の人格的生存にかかわる重要な事柄を、国家権力の干渉無しに各自が決定できる権利です。
<事案>
エホバの証人の信者が自己の意思に反して輸血をされてため、輸血をした医師に対して、自己決定権の侵害を理由に損害賠償を求めて争った。
<結論>
損害賠償は認められる。
<判旨>
患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権*の一内容として尊重されなければならない。
*個人の人格価値を侵害されない権利
自己決定権という用語は使っていないのね!
法の下の平等
憲法は、法の下の平等を規定(14条1項)して、貴族制度の廃止(14条2項)・栄典(14条3項)に伴う特権の禁止といった規定を設けて、平等原則の徹底化を図っています。
法の下
- 【法適用の平等】法を平等に適用しなければならない
- 【法内容の平等】法の内容自体も平等でなければならない
平等
- 【絶対的平等】事実上の違いを無視して機械的に平等に取り扱うこと
- 【相対的平等】事実上の違いを前提に結果として平等になるように取り扱うこと
14条1項は、絶対的な平等を保障したものではなく、差別するべき合理的な理由のない差別を禁止しています。
したがって、合理的と認められる差別的取り扱いをすることは、14条1項に反するものではありません。
法の下の平等が及ぶ範囲
14条1項では、「人種」「信条」「性別」「社会的身分」「門地」を列挙(例示的)していますが、これら以外の事由についても法の下の平等は及びます。
<事案>
女性について6か月の再婚禁止期間を設けている民法733条1項の規定が憲法14条1項に違反しないかが争われた。
<結論>
民法733条1項の規定のうち、100日の再婚期間を設ける部分は合憲、100日を超えて再婚期間を設ける部分は違憲。
<判旨>
- 100日の再婚禁止期間を設ける部分について
民法733条1項の立法目的は、父性の推定の重複を回避し、もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解されるところ、女性の再婚後に生まれる子については、計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって、父性の推定の重複が回避されることになる。夫婦間の子が嫡出子となることは婚姻による重要な効果であるところ、嫡出子について出産の時期を起点とする明確で画一的な基準から父性を推定し、父子関係を早期に定めて子の身分関係の法的安定を図る仕組みが設けられた趣旨に鑑みれば、父性の推定の重複を避けるため100日について一律に女性の再婚を制約することは、婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく、立法目的との関連において合理性を有する。 - 100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分について
婚姻をするについての事由が憲法24条1項の規定の趣旨に照らし十分尊重されるべきものであることや妻が婚姻前から懐胎していた子を産むことは再婚の場合に限られないことを考慮すれば、再婚の場合に限って、前夫の子が生まれる可能性をできるだけ少なくして家庭の不和を避けるという観点や、婚姻後に生まれる子の父子関係が争われる事態を減らすことによって、父性の判定を誤り血統に混乱が生ずることを避けるという観点から、厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間を超えて婚姻を禁止する期間を設けることを正当化することは困難である。他にこれを正当化し得る根拠を見出すこともできないことからすれば、民法733条1項のうち100日超過部分は、合理性を欠いた過剰な制約を課すものとなっている。
<事案>
刑法200条が普通殺人に比べて尊属殺に対して重罰を科していたことが、憲法14条1項に違反しないかが争われた。
<結論>
違憲
<判旨>
- 立法目的の合理性
被害者が尊属であることを犯情の1つとして具体的事件の量刑上重視することは許されるものであるのみならず、更に進んでこのことを類型化し、法律上、刑の加重要件とする規定を設けても、かかる差別的取扱いをもって直ちに合理的な根拠を欠くものと断ずることはできない。 - 立法目的達成手段の合理性
刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑または無期懲役刑のみに限っている点において、その立法目的達成のために必要な限度をはるかに超え、普通殺人に関する刑法199条の法定刑に比し著しく不合理な差別的取り扱いをするものと認められ、憲法14条1項に違反して無効である。
<事案>日本国民である父と外国人であるははとの間に生まれた非嫡出子について、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した者に限り日本国籍の取得を認めることは、憲法14条1項に違反しないかが争われた。
<結論>
違憲
<判旨>
- 国籍取得の際の取扱いの区別が憲法14条1項に違反するか否かの審査の考え方
日本国籍は、我が国の構成員としての資格であるとともに、我が国において基本的人権の保障、公的資格の付与、公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位でもある。一方、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得するか否かということは、子にとっては自らの意志や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄である。したがって、このような事情をもって日本国籍取得の要件に関して区別を生じさせることに合理的な理由があるか否かについては、慎重に検討することが必要である。 - 国籍取得の際の取扱いの区別の合憲性
(旧)国籍法3条1項が、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り、届け出による日本国籍の取得を認めていることによって、認知されたにとどまる子と準正*のあった子との間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは、憲法14条1項に違反する。
*認知後に婚姻することによって、嫡出子としての地位を与えること
<事案>
非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする(旧)民法900条4号は、憲法14条1項に違反しないかが争われた。
<結論>
違憲
<判旨>
- 嫡出子と非嫡出子の法定相続分を区別することの合憲性
法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、その制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている。したがって、遅くとも本件の相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を顧慮しても、嫡出子と非嫡出子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われており、民法900条4号ただし書前段は憲法14条1項に違反していたものというべきものである。 - 本決定以前に確定的なものとなった法律関係への影響
本決定の違憲判断は、平成13年7月から本決定までの間に開始された相続につき、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法900条4号ただし書前段を前提としてされた遺産の分割の審判その他の審判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない。
議員定数不均衡
議員定数不均衡とは、選挙において、各選挙区の議員定数に不均衡があり、人口との比率において、選挙人の投票価値に不平等が生じていることです。
衆議院の場合
<事案>
昭和42年12月10日に行われた衆議院議員選挙について、千葉県1区の選挙人らが、1票の較差が最大4.99対1に及んでいることが投票価値の平等に反するとして、選挙無効の訴えを提起した。
<結論>
違憲だが選挙は有効である。
<判旨>
- 投票価値の平等
選挙権の平等は、各選挙人の投票の価値、すなわち各投票が選挙の結果に及ぼす影響力においても平等であることを含む。形式的に1人1票の原則が貫かれていても、各選挙区における選挙人の数と選挙される議員の数との比率上、各選挙人が自己の選ぶ候補者に投じた1票がその者を議員として当選させるために寄与する効果に大小が生ずる場合には、投票価値が平等であるとはいえない。
投票価値の平等は、選挙制度の決定について国会が考慮すべき唯一絶対の基準ではなく、国会は、衆議院及び参議院それぞれについて他に考慮することのできる事情をも考慮して、公正かつ効果的な代表という目標を実現させるするために適切な選挙制度を具体的に決定することができる。
投票価値の平等は、原則として、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきものではあるが、単に国会の裁量権の行使の際における考慮事項の1つにとどまるものではない。 - 議員定数配分規定の合憲性
議員定数配分規定は、その性質上不可分の一体をなすものと解すべきであり、単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵がある。 - 選挙の有効性
行政事件訴訟法31条1項の起訴に含まれている一般的な法の基本原則に従い、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに、本件選挙が違法である旨を主文で宣言すべきである。
<事案>
昭和58年12月18非に行われた衆議院議員選挙について、1票の較差が最大4.40対1に及んでいることが投票価値の平等に反するとして、選挙無効の訴えが提起された。
<結論>
違憲だが選挙は有効である。
<判旨>
制定又は改正の当時合憲であった議院定数配分規定の下における選挙区間の議員1人当たりの選挙人数又は人口(この両者はおおむね比例するものとみて妨げない)の較差がその後の人口の移動によって拡大し、憲法の選挙権の平等の要求に反する程度に至った場合には、そのことによって直ちに当該議員定数配分規定が憲法に違反するとすべきものではなく、憲法上要求される合理的期間内の是正が行われないとき初めてその規定が憲法に違反するものというべきである。
<事案>
平成21年8月30日に行われた衆議院議員選挙について、1人別枠方式を採用している選挙区割既定の下において、1票の較差が最大2.30対1に及んでいることが投票価値の平等に反するとして、選挙無効の訴えが提起された。
<結論>
合憲(違憲状態ではある)
<判旨>
本件選挙時において、本件区割基準規定の定める本件区割基準のうち1人別枠方式に係る部分は、憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っており、同基準に従って改訂された本件区割規定の定める本件選挙区割りも、憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていたものではあるが、いずれも憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、本件区割基準規定及び本件区割基準が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない。
参議院
<事案>
平成22年7月11日に実施された参議院議員通常選挙について、1票の較差が最大5.00対1に及んでいりことが投票価値の平等に反するとして、選挙無効の訴えが提起された。
<結論>
合憲(違憲状態ではある)
<判旨>
参議院は衆議院とともに国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負っていることは明らかであって、参議院議員選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が交代してよいと解すべき理由は見出しがたい。
<事案>
昭和56年7月5非に行われた東京都議会議員選挙について、1票の較差が最大7.45対1に及んでいることが投票価値の平等に反するとして、選挙無効の訴えが提起された。
<結論>
違法だが選挙は有効である。
<判旨>
公職選挙法の規定は、憲法の投票価値の平等の要請を受け、地方公共団体の議会の議員の定数配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし、各選挙人の投票価値が平等であるべきことを強く要求している。
それではまた次回。
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