ショートは空売りという意味で、売りポジションのことだわ。
ストラドルは、跨ぐ(またぐ)という意味だモン。
「ショート・ストラドル」と「ショート・ストラングル」の違いを説明できますか?
両者は名前こそよく似ていますが(舌をかみそう)、中身はまったく異なります。
ショート・ストラングルは、「このくらいかな~」という”ほんわか”した感じですが、ショート・ストラドルは「ここ!」と決めつけます。
ショート・ストラドルは、「ここ!」と決めつける分、ショート・ストラングルよりも利益になる範囲はせまくなりますが、ハマると利益がけた違いに大きくなります。
オプション取引に触れたばかりのころは、「ストラングル」「ストラドル」はどちらがどちらなのか、ごちゃごちゃになりがりです。
そこで、気の弱い「ラングルさん」、気の強い「ドルくん」と覚えてみてはいかがでしょうか( ´艸`)
オプションの売りは、利益になりやすい投資手法(勝ち9:負け1)です(しかし、負け1がとてつもなく大きくなる)。
またオプションの売りは、初心者にも理解しやすい時間の経過(タイムディケイ)が利益を生んでくれます。
*デルタ・ガンマ・ベガは理解しにくい(それぞれ後述します)
したがって、オプションの売りは買いにくらべて大人気です。
しかし...オプション売りの損失は無限大。
本記事は、「損失無限で怖い」オプションの売りを2つも持つ、ショート・ストラドルについてわかりやすく解説しています。
ショート・ストラドル(恐怖指数二乗)へようこそ💘
- 九州を拠点に自動車販売店を経営
- 2015年より金融系ブログ作成
- ほったらかし投資が座右の銘
オプション売り
本記事のオプション取引は、「日経平均株価」を対象にしている「日経225オプション取引」です(日経平均株価とは?)。
日経225オプション取引については、日経225オプションとは?|コール、プットなどの用語を解説!をご参考ください。
ショート・ストラドルを説明する前に、まずはオプションの売りについて簡単に解説します。
オプション取引
オプション取引は、相場が上がるか下がるかを当てるだけの取引ではありません。
オプション取引は、基本的に相場が動く確率を予想する投資手法です。
オプション戦略
- 日経平均株価が28,000円~30,000円の範囲内であれば利益(ショート・ストラングル)。
*損益分岐点は無視 - 日経平均株価が28,000円~30,000円の範囲外であれば利益(ロング・ストラングル)。
*損益分岐点は無視
ロング・ストラングルについては、オプションの買い戦略|ロング・ストラングルとは?をご参考ください。
オプション取引が、ほかの投資とはまったく違うことがわかると思います。
- 日経平均株価を買える権利。
- 日経平均株価が上がるとうれしい(買い注文)。
- 権利行使価格より日経平均株価が上がれば、高い日経平均株価を安い権利行使価格で買える。
コールオプションとプットオプション
オプションの売り
オプションの売り手は、オプションの買い手とはまったく逆の立場になります。
- コールオプションの買い手|日経平均株価が上がるとうれしい
- コールオプションの売り手|日経平均株価が下がるとうれしい。
- プットオプションの買い手|日経平均株価が下がるとうれしい。
- プットオプションの売り手|日経平均株価が上がるとうれしい。
取引する際、オプションの買い手は売り手にオプション料を支払い、オプションの売り手はオプション料を受けとります(オプション料とは?)。
また、買い手はオプション料を先に支払っているので、売り手よりも強い立場になり、自分にとって不利な取引をキャンセルできます。
オプション取引独特のルールです。
権利と義務
オプションの買い手は、オプションの「売れる権利」「買える権利」を行使してもしなくてもよい。
すなわち買い手は、自分に不利な取引はしなくていいのです。
逆に売り手は、買い手の言いなりとなります。
コールオプション
上図は、コールオプション30,000円(日経平均株価を30,000円で買える権利)の買いポジションです(ポジションとは?)。
日経平均株価が31,000円になれば、31,000円の日経平均株価を30,000円で買えるので、買い手は取引します。
*31,000円ー30,000円=1,000円の利益
日経平均株価が29,000円になれば、29,000円の日経平均株価を30,000円で買うことになるので、買い手は取引しません。
*29,000円ー30,000円=1,000円の損失
売り手の利益は買い手から受けとったオプション料だけで、買い手の損失は売り手に支払ったオプション料だけです。
プットオプション
上図は、プットオプション30,000円(日経平均株価を30,000円で売れる権利)の買いポジションです。
日経平均株価が29,000円になれば、29,000円の日経平均株価を30,000円で売れるので、買い手は取引します。
*30,000円ー29,000円=1,000円の利益
日経平均株価が31,000円になれば、31,000円の日経平均株価を30,000円で売ることになるので、買い手は取引しません。
*30,000円ー31,000円=1,000円の損失
売り手の利益は買い手から受け取ったオプション料だけで、買い手の損失は売り手に支払ったオプション料だけです。
オプションの買い手は自己中( ´艸`)
オプションの売り手は従順なんだモン。
日経平均株価の上限と下限はだれにもわかりません。
株価の途中に通行止めを置かなければ、どこまでも進んでいきそうです。
したがって...
- オプション売りの利益とオプション買いの損失は限定
- オプション売りの損失とオプション買いの利益は無限
となるので、オプションを売るときには通行止め(損失限定)が必要になります。
*通行止めについては後述します。
ショート・ストラドル
ショート・ストラドルについて、わかりやすく解説します。
ショート・ストラングルとショート・ストラドル
同じ限月で同じ権利行使価格のコール・オプション(コール)とプット・オプション(プット)を組み合わせることで得られるポジション。
同じ権利行使価格のコールとプットを同数売ることで得られるポジションはショート・ストラドルと呼ばれ、一般的には、原資産価格が狭い範囲でしか変動しないと予想できる局面で有効とされている。
野村證券
「ショート・ストラングル」は、「日経平均株価はあまり動かないだろう...」と予想したときに有効なオプション戦略です。
ショート・ストラングルについては、オプションの売り戦略|ショート・ストラングルを分かりやすく解説をご参考ください。
ショート・ストラングル
今回の主人公である「ショート・ストラドル」は、「日経平均株価は動かない!」と予想したときに有効なオプション戦略となります。
ショート・ストラドル
両方とも名前が似通っているので、くれぐれも混同しないようにしてください。
- ストラングルは「プット売り」と「コール売り」で囲む。
- ストラドルは「コール売り」と「プット売り」をまたがる。
ショート・ストラドルの形は、ショート・ストラングルとくらべて極端に鋭角です。
したがって、利益(受けとるオプション料)は大きくなりますが、日経平均株価にはさらに「ジッとしていてほしい」ポジションとなります。
「相場はまず動かない」と、予想できるときをねらうオプション戦略(動いたら最悪)。
レンジ相場(ボックス相場)と相性がいいです(レンジ相場とは?)。
レンジ相場
最大利益と最大損失
ショート・ストラドルは、満期日と権利行使価格が同じコールオプションとプットオプションを同じ数だけ売ります。
したがって、コールとプット両方から受けとるオプション料が最大利益で、損失は無限大となります。
すなわち、「通行止め」が置かれていないオプション戦略です。
ITM ATM OTM
ショート・ストラドルは、現在の日経平均株価付近(アット・ザ・マネー)を売るので(しかも2枚)、受けとるオプション料が非常に多くなります(アット・ザ・マネーとは?)。
満期日に、利益になる確率が高いオプション料ほど高くなるからです(満期日とは?)。
オプション料
上の画像は、27,250円がアット・ザ・マネーのコールオプションです。
利益になる確率が高くなる(赤い矢印)ほど、オプション料が高くなっています。
また、受けとるオプション料が多くなるほど、損益分岐点が広がります。
「コール側」「プット側」ともに、受けとったオプション料の分までは、相場が動いてもトントンになるからです。
損益分岐点
証拠金
しかし...アット・ザ・マネー付近は、証券会社に預ける証拠金も、とてつもなく高くなってしまいます(証拠金とは?)。
必要証拠金
上左のグラフは、アット・ザ・マネーから3,000円離れたコールオプション(アウト・オブ・ザ・マネー)で、上右のグラフは、アット・ザ・マネーのコールオプションです(アウト・オブ・ザ・マネーとは?)。
アウト・オブ・ザ・マネーの証拠金(191,000円)よりも、アット・ザ・マネーの証拠金(1,115,000円)が6倍ほども高くなっています。
ショート・ストラドルは、受けとるオプション料が多いのはうれしいのですが、預ける証拠金が高くなるのは悲しいです。
シミュレーション
それでは実際にシミュレーターを見てみましょう。
日経平均株価が26,850円のときに、「コール26,875円」と「プット26,875円」を売ります。
コール26,875円売り+プット26,875円売り
- 最大利益=「コール売り」「プット売り」、それぞれで受けとるオプション料の合計(605円+450円=1,055円)
- 最大損失=無限大
下のグラフは、ショート・ストラドルを組んだ初日の損益グラフです。
初日の損益グラフ
上部が尖っている紺色の線は満期日の損益を、上部が丸い水色の線は初日の損益を表しています。
下のグラフは8日後の損益グラフです。
8日後の損益グラフ
オプション料は日々下がっていくので(時間価値の減少)、水色の線が上昇して利益の範囲が広がりました。
タイムディケイ
ショート・ストラドルはオプションを2つ売っているので、セータの値が2倍になります(オプション売りにとってセータは味方)。
セータについては、オプション取引|セータとは?わかりやすく解説します!をご参考ください。
したがって、時間の経過によるオプション料の減少が単体の売りよりも早くなり、利益になりやすいです。
セータが味方であればガンマは敵
ガンマ
損益グラフが「山の形」をしているショート・ストラドルは、日経平均株価が左右(実際は上下)どちらかに動けば動くほど損失が大きくなります(ガンマの影響)。
ガンマの働き
ガンマについては、初心者向け|オプション取引のガンマとは?わかりやすく解説!をご参考ください。
- 日経平均株価が上がれば上がるほど、コール売りの損失(無限)が大きくなる(コール売りの利益は限定でオプション料のみ)。
- 日経平均株価が下がれば下がるほど、プット売りの損失(無限)が大きくなる(プット売りの利益は限定でオプション料のみ)。
損失と利益の範囲
ショート・ストラドルにとって、ガンマは敵でセータは味方ということがわかりました。
問題はベガです。
ベガだけは、敵になるのか味方になるのかわかりません。
そこでベガを味方につけるために、IV(インプライド・ボラティリティ)が今後下がりそうなときを選びます。
IVが下落すると、オプション料も下がりやすいからです。
IVについては、オプション取引|ボラティリティをわかりやすく解説!をご参考ください。
相場が落ちついてくると、オプション(とくにプット)が売られていきます(投資家が安心するから)。
- オプション料は買い手が多いと高くなる→IVも上がる
- オプション料は売り手が多いと安くなる→IVも下がる
ショート・ストラドルにとって、IVの下落時は最高の舞台となります。
セータ・ベガ連合軍 VS ガンマ
上記の戦いで、どちら勝つかは「言わずもがな」ですね(´艸`)
まとめ
- 相場が動かないときをねらう(レンジ相場)。
- 重要行事や選挙期間、災害時などはさける(相場が荒れるから)。
- IVが高い(オプション料が高い)ときに取引をはじめる。
なんども繰りかえしてきましたが、ショート・ストラドルは損失無限です。
さまざまな書籍やブログで、ショート・ストラドルは危険と書かれています。
しかし、ショート・ストラドルで受けとれるオプション料は魅力的です。
そこで、相場をできるかぎりチェックする「わずらわしさ」はありますが...
- 日経平均株価が、上昇相場に乗りそうになったらコールオプションの買いをいれる。
- 日経平均株価が、下落相場に乗りそうになったらプットオプションの買いをいれる。
- オプションの買いをいれることで、売りと買いの損益が相殺されて損失限定になる。
という対処法(通行止め)をオススメします。
オプション取引の保険には、必ずオプションの買い注文を入れてください。
- 「ほったらかし投資」とは読んで字のごとく、商品を買ったあとは ”ほったらかし” ているだけの投資方法。
- 「ほったらかし投資」の中身はさまざまだが、投資のプロやAIに売買をまかせるというのが基本。
- 「ほったらかし投資」は、<初心者も始めやすい><少額から始められる><長期投資に有効な>投資方法。
それではまた。
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