精神的自由権には、4種類あるわ。
今回は、「信教の自由」を学習するモン。
本ブログでは、行政書士の試験科目「人権・精神的自由権(信教の自由)」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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信教の自由
信教の自由の内容
憲法は、信教の自由を保障しています。
信教の自由の内容としては、「信仰の自由」「宗教的行為の自由」「宗教的結社の自由」という3つがあります。
信教の自由の内容
信仰の自由 | 宗教を信仰し又は信仰しないこと、信仰する宗教を選択・変更することについて、 個人が自らの意思で決定する自由 |
宗教的行為の自由 | 宗教上の祝典・儀式・行事その他布教等を行う自由 |
宗教的結社の自由 | 宗教的行為を行うことを目的とする団体(宗教法人など)を結成する自由 |
信教の自由の制約
「信仰の自由」は内心にとどまるものなので、絶対的に保障されます。
一方の「宗教的行為の自由」「宗教的結社の自由」は、外部的行為を伴うので、他者の権利・利益や社会に害悪を及ぼす場合には、公共の福祉による制約を受けます。
<事案>
宗教法人法81条にいう「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」及び「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」を行ったとして、オウム真理教の解散命令が請求されたため、この解散命令が憲法20条1項に違反するのではないかが争われた。
<結論>
合憲
<判旨>
- 宗教法人に関する法的規制の合憲性判断基準
解散命令などの宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教的行為を法的に制約する効果を伴わないとしてもそこに何らかの支障を生じさせるならば、信教の自由の重要性に配慮し、規制が憲法上許容されるか慎重に吟味しなければならない。 - 解散命令が宗教上の行為に及ぼす影響
宗教法人81条に規定する宗教法人の解散命令の制度は、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものでなく、その制度の目的も合理的ということができる。解散命令によって宗教団体やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は、解散命令に伴う間接的で事実上のものであるにとどまる。
<事案>
エホバの証人の教義に基いて、体育の剣道実技を拒否したため、原級留置・退学処分を受けた市立工業高等専門学校の学生が、当該処分は信教の自由を侵害するとして、取消しを求めて争った。
<結論>
学校側の措置は、社会観念上著しく妥当を欠く処分であり、裁量権の範囲を超える違法なものである。
<判旨>
剣道実技の履修が必須のものとはいいがたく、体育科目による教育目的の達成は、他の体育科目の履修などの代替的方法によっても性質上可能である。そして、他の学生に不公平感を生じさせないような適切な方法・態様による代替措置は、目的において宗教的意義を有し、特定の宗教を援助・助長促進する効果を有するものということはできず、他の宗教者又は無宗教者に圧迫・干渉を加える効果があるともいえない。
政教分離原則
憲法は、「個人の信教の自由」を保障するだけではなく、国家と宗教を分離する政教分離原則を採用しています。
なぜなら、国家が特定の宗教と強いかかわり合いをもつと、その宗教に有利な政治を行うおそれがあり、他の宗教の信者の権利が侵害されるおそれがあるからです。
もっとも、政教分離原則は、国家と宗教のかかわり合いを一切排除するものではありません。
なぜなら、宗教団体に対しても、他の団体と平等に給付を行わなければならない場合があるからです。
たとえば、宗教団体が設置する私立学校に対してです。
政教分離原則違反が問題となった判例には、以下のようなものがあります。
<事案>
津市が、市体育館の建設に当たり、神式の地鎮祭を挙行し、それに抗菌を支出したことが、憲法20条・89条に違反しないかが争われた。
<結論>
合憲
<判旨>
- 政教分離原則の法的性質
政教分離規定は、いわゆる制度的保障の規定であって、信教の自由そのものを直接保障するものでなく、国家と宗教の分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。 - 政教分離の程度
国家と宗教との完全な分離を実現することは、実際上不可能に近いものであるから、政教分離原則は、国家と宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、そのかかわり合いが相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものである。 - 政教分離原則違反の判断基準
憲法20条3項により禁止される「宗教的活動」とは、行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助・助長・促進又は圧迫・干渉等になるような行為をいう。
<事案>
愛媛県が靖国神社に対して玉串料等の名目で公金を支出したことが、憲法20条3項、89条に違反しないかが争われた。
<結論>
違憲
<判旨>
県が玉串料等を靖国神社等に奉納したことは、その目的が宗教的意義を持つことを免れず、その効果が特定の宗教に対する援助・助長・促進になると認めるべきであり、これによりもたらされる県と靖国神社等とのかかわり合いがわが国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものであって、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たる。
<事案>
市が町内会に対してその所有する土地を神社施設の敷地として無償で使用させていたため、市の行為は憲法の定める政教分離原則に違反するのではないかが争われた。
<結論>
違憲
<判旨>
市が、町内会に対し、市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為は、市と本件神社ないし神道とのかかわり合いが、我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして、憲法89条の禁止する公の財産の利用提供に当たり、ひいては憲法20条1項後段の禁止する宗教団体に対する特権の付与にも相当する。
<事案>
氏が管理する都市公園内に儒教の祖である孔子等を祀った施設の設置を許可した上、敷地の使用量の全額を免除した市長の行為は、憲法の定める政教分離原則に違反するのではないかが争われた。
<結論>
違憲
<判旨>
敷地の使用量の全額免除は、施設の観光資源としての意義や歴史的価値を考慮しても、一般人の目から見て、市が特定の歴史に対して特別の便益を提供し、これを援助していると評価されてもやむを得ないものといえ、社会通念に照らして総合的に判断すると、市と宗教とのかかわり合いが、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとして、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に該当すると解するのが相当である。
それではまた次回。
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