今回は、地方公共団体の機関を学習するわ!
議会と執行機関の関係が、頻出だモン!
本ブログでは、行政書士の試験科目「地方自治法:地方公共団体の機関」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
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議会
議会の地位
憲法93条1項は、地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置することとしています。
これを受けて、地方自治法89条1項も、地方公共団体にその議事機関として、普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもって組織される議会を設置することとしています。
地方公共団体の議会は、国でいうところの国会と同様の役割を果たします。
もっとも、国会が国権の最高機関であるのと異なり、地方公共団体の議会は、地方公共団体の最高機関ではなく、長と対等の地位を有することになります。
地方公共団体の議員も長も、ともに住民により直接選挙される点で、国会議員のみが国民により選挙される国の場合と異なるからです。
議会の構成
議会は、議院とその中から選挙される議長・副議長で構成されます。
議員
地方自治法上、議会の議員の任期は、4年とされています。
議会の議員は、衆議院議員・参議院議員・他の地方公共団体の議会の議員・常勤の職員・短時間勤務職員と兼ねることができません。
なお、議会の議員は、議院の定数の12分の1以上の者の賛成により、議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出できます。
ただし、予算については提出できません。
議長・副議長
議会は、議院の中から議長・副議長1人を選挙しなければなりません。
議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表します。
また、委員会に出席し、発言することができます。
議長に自己があるとき、欠けたときは、副議長が議長の職務を行います。
議会の活動
招集
議会の招集は、長が行います。
もっとも、臨時会の場合、議長は議会運営委員会の議決を経て、議員定数の4分の1以上の者はこの議決を経ずに、長に対して会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求できます。
そして、議長等の臨時会の招集請求に対して長が召集しないときは、議長が臨時会を招集できます。
会期
地方公共団体の議会も、国会と同様に、1年を通じて常に活動しているわけではなく、活動するのは一定の期間(会期)に限られています。会期には、定例会と臨時会があります。
案件の有無に関係なく、毎年条例で定める回数、定期的に招集されるもの
必要がある場合に、あらかじめ告示された特定の事件を審議するために招集されるもの
もっとも、条例により、定例会・臨時会の区分を設けず、通年の会期とすることもできます。
議事・議決
議会は、議員定数の半数以上が出席しなければ、議事を開き議決できません。
国会の定足数は総議員の3分の1以上ですが、地方公共団体の議会の定足数は、国会よりも厳しく半数以上とされています。
また、議会の議事は、出席議員の過半数で決定し、可否同数のときは、議長が決定権をもっています。
会議の公開
議会の会議は、国会の場合と同様、公開が原則です。
もっとも、議長または議員3人以上の発議により出席議員の3分の2以上の多数で議決した場合、秘密会を開くことができます。
議会の権限
議会は、条例の制定・改廃、予算の議決、決算の認定、契約の締結など、地方自治法96条1項に列挙された事項について議決する権限を有します。
また、ここに列挙された事項以外の事項であっても、法定受託事務に係るものであって国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除き、条例で議決事項を追加できます。
意味 | 除外事由 | |
検査権 | 議会は、普通地方公共団体の事務に関して書類等を検閲し、執行機関の報告を請求して、事務の管理、議決の執行および出納を検査できる | 自治事務にあっては、労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるもの、法定受託事務にあっては、国の安全を害するおそれがあることその他の事由により対象とすることが適当でないものとして政令で定めるもの |
監査請求権 | 議会は、監査委員に対し、普通地方公共団体の事務に関する監査を求め、監査の結果に対する報告を請求できる |
委員会制度
議会には、通常、本会議と委員会があります。
本会議は、議員全員で構成される議会の意思決定機関です。
対して委員会は、一定の分野を集中的に審議するために、一部の議員で構成される合議制の機関です。
本会議の他に委員会が置かれるのは、一部の議員が集中的に審議してその結果を本会議に報告した方が、たくさんの案件をスムーズに処理できるからです。
委員会には、
- 常任委員会
- 議会運営委員会
- 特別委員会
の3種類ありますが、いずれも置くかどうかは議会の事由です。
常任委員会 | その部門に関する調査や議案・陳情の審査などを行う常設の委員会 |
議会運営委員会 | 議会の運営・会議規則に関する事項や議長の諮問に関する事項などを調査する常設の委員会 |
特別委員会 | 議会の議決により付議された事件を審査する特別の必要がある場合に設置される委員会 |
請願
普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議院の照会により請願書を提出しなければなりません。
解散
議会が解散するのは、以下の場合です。
- 住民による議会の解散請求があり、解散の投票において過半数の同意があった場合
- 長の不信任決議があり、長が議会を解散した場合
- 議員数の4分の3以上の者が出席し、その5分の4以上の者が同意した場合
執行機関
地方自治法における執行機関とは、地方公共団体の事務を管理・執行する機関であって、自ら地方公共団体の意思を決定し外部に表示する権限を有するものをいい、行政組織法における行政庁の概念に類似します。
地方公共団体には、執行機関として、法律の定めるところにより、長と行政委員会が置かれます。
長
地位
都道府県の長は都道府県知事、市町村の場合は市町村長です。
いずれも住民の直接選挙で選任され、任期は4年です。
長の権限
地方公共団体の統轄・代表 | 地方公共団体を統括し代表する |
事務の管理・執行 | 地方公共団体の事務を管理し執行する |
担任事務 | ・議会に議案を提出する ・予算を調整し執行する ・地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、過入金、手数料を徴収し過料を科す |
補助機関
補助機関とは、長の職務を補助する機関です。
補助機関には、長を補佐する副知事・副市長村長と、地方公共団体の会計事務をつかさどる会計管理者があります。
副知事は都道府県に、副市長村長は市町村に置かれ、定数は条例で定めます(置かなくてもいい)。
会計管理者は、都道府県・市町村ともに必ず1人置かなければなりません。
行政委員会
行政委員会とは何か
行政委員会とは、長から独立した地位と権限を有する行政機関であり、長への権力の集中を防止するために設けられたものです。
複数の人間で構成される合議制の機関の場合は、行政委員会、1人の人間で構成される独任制の期間の場合は行政委員と呼ばれます。
都道府県・市町村には、以下の行政機関を置かなければなりません。
都道府県・市町村 | ・教育委員会 ・選挙管理委員会 ・人事委員会 ・監査委員 |
都道府県 | ・公安委員会 ・労働委員会 ・収用委員会 ・海区漁業調整委員会 ・内水面漁場管理委員会 |
市町村 | ・農業委員会 ・固定資産評価審査委員会 |
行政委員会の権限
行政委員会は、法律の定めるところにより、法令または普通地方公共団体の条例もしくは規制に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規定を定めることができます。
条例・長の規則・委員会の規則
条例 | 長の規則 | 委員会の規則 | |
権利の制限・義務の賦課 | 可能 | 不可 | |
罰則 | 刑罰または過料 | 過料のみ | 不可 |
根拠法 | 地方自治法 | 個別の法律 |
監査委員と外部監査
監査委員とは、地方公共団体の事務や会計の処理が適正に行われているかをチェックする機関です。
監査委員は、独任制の機関です。
監査委員は、長が、議会の同意を得て、識見を有する者及び議員の中から選任します。
監査委員の定数は、都道府県及び政令で定める市にあっては4人、その他の市町村にあっては2人とされていますが、条例でその定数を増加することができます。
かんさいいんいよる監査には、自主的に行われる一般監査と、住民・議会・長からの請求に基づいて行われる特別監査があります。
一般監査 | 財務監査 | 財務・経営に関する監査 |
行政監査 | 一般行政事務の執行に関する監査 |
特別監査 | ・事務監査請求による監査 ・議会の請求による監査 ・長の請求による監査 ・財政的援助を与えているものに関する監査 ・住民監査請求による監査 |
監査委員の監査とは区別されるものとして、外部監査人との契約による監査があります(外部監査制度)。
外部監査制度には、包括外部監査制度と個別外部監査制度があります。
意味 | 導入の義務 | |
包括外部監査制度 | 毎会計年度ごとに契約を締結し、 外部監査人が自己の判断に基づき特定の事件を監査する制度 | ・都道府県、指定都市、中核市は必須 ・上記以外は条例により任意 |
個別外部監査制度 | 議会・長などの請求があった場合に、 個別の事項ごとに契約を締結し、監査委員に代わって監査する制度 | ・条例により任意 |
議会と長の関係
首長主義
地方公共団体では、議会の議員も長も、ともに住民により直接選挙されることから、首長主義が採用されているといえます。
首長主義の下では、議会と長が互いにけん制し合って職務を行うことが期待されます。
例えば、議会と長の間に意見の対立が生じた場合、長は、議会の議決や選挙を拒否して、再度の議決を求めることができます(長の拒否権)。
また、議会は長に対する不信任決議をすることができ、これに対して、長は議会を解散することができます。
長の拒否権
長の拒否権には、議会に対して異議があれば任意に講師することができる一般的拒否権と、一定の要件を満たす場合に必ず行使しなければならない特別拒否権があります。
そして、長が拒否権を行使する場合、その理由を示さなければなりません。
- 【議会の議決について異議があるとき】
再度同じ議決がされた場合、条例・予算について異議があるときは、出席議員の3分の2以上の者の同意により、条例・予算以外のときは、過半数の同意により、同じ議決がされた場合その議決が確定する
- 【議会の議決・選挙がその権限を超えまたは法令・会議規則に違反すると認められるとき】
再度同じ議決がされた場合、審査の申立てができる - 【普通地方公共団体の義務に属する経費を削減しまたは減額する議決をしたとき】
再度同じ議決がされた場合、その経費及びこれに伴う収入を予算に計上して支出できる - 【非常の災害による応急・復旧の施設または感染症予防のために必要な経費を削減しまたは減額する議決をしたとき】
再度同じ議決がされた場合、その議決を不信任の議決とみなすことができる
長の不信任と議会の解散
初回の不信任決議
議会が長の不信任決議をするためには、議員数の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者の同意がなければなりません。
議長から不信任決議をした旨の通知を受けた長は、その通知を受けた日から10日以内に議会を解散できます。
長が議会を解散しなかった場合、長は、通知を受けた日から10日を経過した日に失職します。
再度の不信任決議
長が議会を解散し、解散後初めて招集された議会において再び不信任議決をするには、議員数の3分の2以上の者が出席し、その過半数の者の同意が必要です。
長は、議長から再び不信任議決をした旨の通知があった日に失職します。
専決処分
専決処分とは、
- 議会が成立しないとき
- 所定の理由により定足数に達せずなお会議を開くことができないとき
- 長において議会の議決すべき事件について、特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき
- 議会において議決すべき事件を解決しないとき
に、長が議会の議決すべき事件を処分することをいいます。
専決処分をした場合、長は、次の会議において専決処分をした旨を議会に報告し、その承認を求めなければなりません。
また、普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものについても、長は、専決処分をすることができます。
上記の場合、議会への報告は必要ですが、承認は不要です。
長の議場への出席
議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、長は議場に出席しなければなりません。
ただし、出席すべき日時に議場に出席できないことについて正当な理由があり、その旨を議長に届け出たときは、出席しなくてもよいとされています。
地域自治区
近時、市町村合併が進み市町村の区域が広くなったことから、市町村の政治に住民の意見が反映されづらくなってきました。
そこで、地方公共団体の区域をいくつかのブロックに分けて、その地域のことはその地域の住民たちで決定することができるという地域自治区の制度が設けられています。
これにより、市町村は、条例で定めることにより、地域自治区を設けることができるようになりました。
なお、地域自治区には、簡単な窓口業務を行う事務所を置かなければならず、また、地域自治区の事務に関して市町村長などから諮問を受ける地域協議会を置かなければなりません。
それではまた次回。
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