人身の自由は、自由権の一種だわ。
判例・条文から多数出題されているモン。
本ブログでは、行政書士の試験科目「人権・人身の自由」について要約しています。
行政書士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、行政書士試験を受験される方の手助けになれたら幸いです。
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- ほったらかし投資が座右の銘
奴隷的拘束および苦役からの自由
奴隷的拘束
奴隷的拘束とは、自由な人格者であることと、両立しない程度の身体の自由の拘束状態のことです(監獄部屋など)。
奴隷的拘束は、絶対的に禁止されています。
意に反する苦役
意に反する苦役とは、本人の意思に反して強制される苦役のことです(徴兵制など)。
意に反する苦役は、奴隷的拘束と異なり、犯罪による処罰の場合は例外的に許されています。
法定手続の保障
31条の意義
憲法31条は、文言上は「手続の法定」のみを要求しています。
しかしそれに加えて、「法定された手続の適正」、「実体規定の決定(罪刑法定主義)」、「法定された実体規定の適正」も要求しています。
告知と聴聞(ちょうもん)
「手続の適正」の中でもとくに重要とされるのが、「告知と聴聞の手続」です。
「告知と聴聞の手続」とは、公権力が国民に刑罰その他の不利益を科す場合、あらかじめ当事者に対してその内容を告知し、当事者に弁解と防御の機会を与えるというものです。
「告知と聴聞の手続」を経ることで、不利益を受ける個人の権利を保護し、公権力による不利益処分が適正にされることになります。
<事案>
貨物の密輸を企てた被告人が有罪判決を受けた際に、その付加刑として密輸した貨物の没収判決を受けたが、この貨物には被告人以外の第三者の所有する貨物が交じっていた。そこで、所有者である第三者に事前に財産権養護の機会を与えないで没収することが違憲ではないかが争われた。
<結論>
違憲
<判旨>
- 第三者所有物の没収の合憲性
第三者の所有物の没収は、被告人に対する付加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収される第三者についても、告知・弁解・防御の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科すことにほかならない。 - 当事者適格
没収の言い渡しを受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であっても、被告人に対する付加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは当然である。
また、被告人としても、その物の占有権を剥奪され、これを使用・収益できない状態におかれ、所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険にさらされる等、利害関係を有することが明らかであるから、上告により救済を求めることができるものと解すべきである。
行政手続との関係
31条は、「刑罰を科せられない」と規定しているので、直接的には刑事手続に関する規定です。
そのため、31条が行政手続にも適用されるのかが問題となります。
<事案>
「多数の暴力主義的破壊活動者の集合の用に供され又は供されるおそれがある工作物」の使用を運輸大臣が禁止することができる旨を定める特別立法の合憲性が争われた。
<結論>
合憲
<判旨>
行政手続については、刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に31条の定める法定手続の保障の枠外にあると判断すべきではない。しかしながら、行政手続は、刑事手続とは性質上差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるので、行政処分の相手方に事前の告知・弁解・防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容・性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容・程度・緊急性等を総合較量して決定すべきである。
条例による刑罰
31条は、「法律」の定めるところによらなければ刑罰を科せられないと想定していることから、条例によって刑罰を科すことができるかが問題となります。
大阪市の「街路等における売春勧誘行為等の取り締まり条例」に違反した者が、この条例は憲法31条に違反するとして争った。
<結論>
合憲
<判旨>
条例は、法律以下の法令といっても、公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されていれば足りる。
被疑者・被告人の権利
被疑者の権利
不法な逮捕からの自由
無実の者を不当に拘束することを阻止するため、逮捕するためには司法官憲(裁判官)が発する令状が必要です(令状主義)。
なお、現行犯逮捕の場合には、真犯人であることが明確であり不当な拘束のおそれは少ないことから、例外的に令状は不要とされています。
抑留・拘禁からの自由
抑留(よくりゅう)とは一時的な身体の拘束のことであり、拘禁(こうきん)とは継続的な身体の拘束のことです。
何人も理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留・拘禁はされないと規定されています(34条前段)。
また、拘禁は抑留よりも人身の自由に対する制約が大きいので、捜査機関による不当な拘禁を防止するため、公開の法廷で理由を示すこととされています(34条後段)。
住居の不可侵等
住居を不当な侵入から守り、プライバシーを保護するため、住居・書類・所持品について侵入・捜索・押収する場合には、裁判官が発する令状が必要とされています(35条1項)。
もっとも、逮捕に伴い侵入等がなされる場合には、逮捕の時点で令状が出されているので、侵入等については令状は不要とされています。
被告人の権利
残虐刑の禁止
大日本帝国憲法の時代に拷問や残虐な刑罰が行われていたとの反省から、残虐な刑罰を絶対に禁止する規定が置かれています(36条)。
公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利
憲法37条1項は、刑事被告人に対し、「公平な裁判所」「迅速な」「公開裁判」を受ける権利を保障しています。
証人審問権・喚問権
被告人には、証人に対して質問する権利(証人審問権)や、証人を法廷に呼んでもらう権利(証人喚問権)が認められています(37条2項)
弁護人依頼権
刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができ、被告人が自ら依頼できないときは、国で附する(国選弁護人)こととされています(37条3項)。
黙秘権の保障
被告人には、自分に不利益な供述を強要されない権利(黙秘権)が保障されています。
<事案>
所得税法上の質問検査権に基づく調査を拒否して起訴された被告人が、質問検査は令状主義および黙秘権の保障に反するとして争った。
<結論>
合憲
<判旨>
- 令状主義
憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保護した趣旨であるが、当該手続が刑事責任追及を目的とするものではないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然にも憲法35条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。 - 黙秘権の保障
憲法38条1項による保障は、純然たる刑事手続においてばかりでなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には等しく及ぶ。
自白
38条2項は、強制・拷問・強迫による自白又は不当に長く抑留・拘禁された後の自白は、証拠とすることができない旨を規定しています(自白法則)。
また、38条3項は、任意になされた自白であっても、これを補強する別の証拠がなければ、有罪とされることはない旨を規定しています(補強法則)。
遡及処罰と二重処罰の禁止
39条前段は、何人も、実行のときに違法であった行為又はすでに無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われないとして、遡及処罰の禁止と一事不再理を規定しています。
また、39条後段は、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われないとして、二重処罰の禁止を規定しています。
それではまた次回。
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