ショート・ストラングルのショートは、「空売り」という意味だわ。
ショート・ストラングルのストラングルは、「抑える」という意味だモン。
オプション取引を少しでも「かじった」ことがある方は、「オプションの売りは、ほぼ利益になる」ということを、経験しているか耳にしたことがあるでしょう。
実際わたし自身も、日経225オプション取引|コールの売り戦略をわかりやすく説明!という主題のブログを書いているように、「オプションの売りは、ほぼ利益になる」は間違いないと確信しています。
しかし...美しいバラにはトゲがあるように、美味しい投資にもトゲがあります。
取引するたびに数千円~数万円の利益を重ねて、ある日数十万円~数百万円の損失。
わたし自身、今では「投資ブログのようなもの」を書いていますが、オプション取引をはじめたばかりの頃に、ドカーンと損失の一撃をくらった経験があります。
あまりのショックに異常な腰痛を引き起こして、数日間立ち上がれなかったです。
筆者のオプション取引の成績
オプション取引は、株式投資やFXとは違って上か下かを当てるだけの取引ではありません。
本記事で紹介するショート・ストラングルは、「相場が上がってもここまで、相場が下がってもここまで」を当てるという利益になる確率が非常に高い投資戦略です。
ただし前述したように、美味しいショート・ストラングルにはトゲがあるので、トゲを抜いてから味わう必要があります。
本記事では、ショート・ストラングルの説明に合わせてトゲの抜き方についても解説しています。
ぜひ、ショート・ストラングルのトゲをしっかりと抜いて、美味しいショート・ストラングルを味わってください。
ショート・ストラングルへようこそ💘
- 九州を拠点に自動車販売店を経営
- 2015年より金融系ブログ作成
- ほったらかし投資が座右の銘
オプション売り
本記事のオプション取引は、「日経平均株価」を対象にしている「日経225オプション取引」です(日経平均株価とは?)。
日経225オプション取引については、日経225オプションとは?|コール、プットなどの用語を解説!をご参考ください。
ショート・ストラングルを説明する前に、まずはオプションの売りについて簡単に解説します。
オプション取引
オプション取引は前述したように、相場が上がるか下がるかを当てるだけの取引ではありません。
オプション取引の戦略(無数にある)は、基本的に相場がどれだけ動くかを予想します。
オプション戦略
- 上左のグラフでは、日経平均株価が28,000円~30,000円の範囲内であれば利益(ショート・ストラングル)。
- 上右のグラフでは、日経平均株価が28,000円~30,000円の範囲外であれば利益(ロング・ストラングル)。
ロング・ストラングルについては、オプションの買い戦略|ロング・ストラングルとは?をご参考ください。
オプション取引は、ほかの投資とは異なる独特の投資手法です。
- 日経平均株価を買える権利。
- 日経平均株価が上がるとうれしい(コールオプション買い)。
- 「前もって決めた価格」より日経平均株価が上がれば、高くなった日経平均株価を安い「前もって決めた価格」で買える。
- 日経平均株価を売れる権利。
- 日経平均株価が下がるとうれしい(プットオプション買い)。
- 権利行使価格より日経平均株価が下がれば、安くなった日経平均株価を高い権利行使価格で売れる。
オプション売り
オプションの売り手は、オプションの買い手とはまったく逆の立場です。
- コールオプションの買い手=日経平均株価が上がるとうれしい↔コールオプションの売り手=日経平均株価が下がるとうれしい。
- プットオプションの買い手=日経平均株価が下がるとうれしい↔プットオプションの売り手=日経平均株価が上がるとうれしい。
オプションの買い手はオプション料を売り手に支払い、オプションの売り手はオプション料を受けとることで取引が成立します(オプション料とは?)。
またオプション取引には、ほかの投資にはないルールがあります。
オプション料
オプションの買い手は、オプションの権利を行使してもしなくてもよい。
すなわちオプションの買い手は、自分に不利な取引はしなくていいのです。
逆にオプションの売り手は、オプションの買い手の言いなりとなります。
コールオプション
上図は、コールオプション30,000円(日経平均株価を30,000円で買える権利)の買いポジションです(ポジションとは?)。
日経平均株価が31,000円になれば、31,000円の日経平均株価を30,000円で買えるので、買い手は取引します。
*31,000円ー30,000円=1,000円の利益
日経平均株価が29,000円になれば、29,000円の日経平均株価を30,000円で買うことになるので、買い手は取引しません。
*29,000円ー30,000円=1,000円の損失
売り手の利益は買い手から受けとったオプション料だけで、買い手の損失は売り手に支払ったオプション料だけです。
プットオプション
上図は、プットオプション30,000円(日経平均株価を30,000円で売れる権利)の買いポジションです。
日経平均株価が29,000円になれば、29,000円の日経平均株価を30,000円で売れるので、買い手は取引します。
*30,000円ー29,000円=1,000円の利益
日経平均株価が31,000円になれば、31,000円の日経平均株価を30,000円で売ることになるので、買い手は取引しません。
*30,000円ー31,000円=1,000円の損失
売り手の利益は買い手から受け取ったオプション料だけで、買い手の損失は売り手に支払ったオプション料だけです。
オプションの売り手は従うしかないのね。
オプションの買い手は、お金を払っている分だけ取引が有利になるモン。
日経平均株価の上限と下限はだれにもわかりません。
株価の途中にリミッターを置かなければ、どこまでも進んでいきそうです。
したがって...
- オプション売りの利益とオプション買いの損失は限定
- オプション売りの損失とオプション買いの利益は無限
となるので、オプションを売るときにはリミッター(損失限定)が必要になります。
*リミッターについては後述します。
ショート・ストラングル
ショート・ストラングルは、「コールオプションの売り」と「プットオプションの売り」を組みあわせて利益をねらうオプション戦略です。
「コールオプション」「プットオプション」ともに、必ず同じ限月(げんげつ)に同じ枚数を売ります(限月とは?)。
- コールオプションの売り=日経平均株価は、○○円(権利行使価格)より上がらないだろう。
- プットオプションの売り=日経平均株価は、○○円(権利行使価格)より下がらないだろう。
ショート・ストラングル
したがって、日経平均株価が同じ範囲で上下に動いているとき(レンジ相場)と相性がいいです。
レンジ相場(ボックス相場)と上昇相場
ショート・ストラングルは、一方的な上昇相場や下落相場には向いていません。
コールオプションとプットオプションを売っている範囲内だけが利益だからです。
利益と損失
日経平均株価が、コールオプションとプットオプションを売っている範囲を超えてしまうと損失になってしまいます。
すなわちショート・ストラングルは、日経平均株価は上下どちらに動いてもいいけど、大きくは動いてほしくないオプション戦略なのです。
したがって、デルタができる限り0(ゼロ)になるように、コールオプションとプットオプションを組みあわせます(デルタニュートラル)。
デルタがプラスorマイナスに傾くと、利益が不均等になるからです。
デルタニュートラル
デルタの傾き
デルタを0に近づけることで、日経平均株価が上がっても下がってもどちらでもいいポジションになります。
デルタについては、初心者向け|オプション取引のデルタをわかりやすく解説します!をご参考ください。
シミュレーター
それでは実際に、シミュレーターを見てみましょう。
日経平均株価が26,850円のときに、「コール28,500円売り+プット25,000円売り」のショート・ストラングルを組んでみました。
コール28,500円売り+プット25,000円売り
- 紺色グラフ=満期日
- 水色グラフ=エントリー日
- 横線=日経平均株価
- 縦線=損益
- 最大利益=コールとプットそれぞれで受け取るオプション料の合計(65円+100円=165円)
- 最大損失=無限大
- 満期日の損益分岐点(コール側)=コールを売っている価格と最大利益の合計(28,500円+165円=28,665円)
- 満期日の損益分岐点(プット側)=プットを売っている価格と最大利益の差(25,000円ー165円=24,835円)
オプションの売りにはガンマが損失(下図参照)に働くので、日経平均株価が上がれば上がるほど、コール側の損失が大きくなっていきます(デルタショート)。
ガンマ
ガンマについては、初心者向け|オプション取引のガンマとは?わかりやすく解説!をご参考ください。
コールオプションの売りは、デルタショートです。
デルタショート
日経平均株価が下がれば利益になり、上がれば損失になるポジション。
デルタショートは右斜め下がりの線。
- コール売りの場合=「\」の線は相場が下がる(左へ)と利益で、上がる(右へ)と損失。
- プット買いの場合=「\」の線は相場が下がる(左へ)と利益で、上がる(右へ)と損失
同じ原理で、日経平均株価が下がれば下がるほど、プット側の損失が大きくなっていきます(デルタロング)。
デルタロング
日経平均株価が上がれば利益になり、下がれば損失になるポジション。
デルタロングは右斜め上がりの線。
- コール買いの場合=「/」の線は相場が上がる(右へ)と利益で、下がる(左へ)と損失。
- プット売りの場合=「/」の線は相場が上がる(右へ)と利益で、下がる(左へ)と損失。
デルタロングとデルタショート
ショート・ストラングルのねらい目
ショート・ストラングル(オプションの売り)にとってガンマは大敵なので、ガンマはできるだけ小さいほうがいいです。
したがって、できるだけ現在の日経平均株価から離れたオプションを選びます(利益は減りますが...)。
「アット・ザ・マネー」から離れるほど(現在の日経平均株価から離れるほど)、ガンマは小さくなるからです(アット・ザ・マネーとは?)。
ガンマの変化
オプションの売り手にとって、ガンマは敵ですが「セータ」は味方になります。
セータについては、オプション取引|セータとは?わかりやすく解説します!をご参考ください。
ショート・ストラングルにとって、相場が動かずに利益の範囲内にじっとしていてくれるのがベストです。
オプション料は日ごと下がっていくので(時間価値の減少)、オプションの売り手にとって、セータは大事なパートナーとなります。
セータの値は、満期日が近づくほど大きくなるので、できるだけ満期日までの日数が少ないときにエントリーしてください。
セータ
ショート・ストラングルにとって、ガンマは敵でセータは味方であることは、はっきりしています。
敵になるか味方になるか、わからないのは「ベガ」です。
ベガについては、オプション取引|ベガとは?わかりやすく解説します!をご参考ください。
ベガを味方につけるためには、インプライド・ボラティリティ(IV)が今後下がりそうなときを選びます。
Ⅳについては、オプション取引|ボラティリティをわかりやすく解説!をご参考ください。
IVが下落すると、オプション料も下がるからです。
相場が落ちついてくると、オプション(とくにプット)が売られていきます(ドキドキしなくなる)。
- オプション料は買い手が多いと高くなる→IVも上がる
- オプション料は売り手が多いと安くなる→IVも下がる
ショート・ストラングルにとって、IVの下落時は最高の舞台となるのです。
セータ・ベガ連合軍 VS ガンマ
上記の戦いで、勝利がどちらになるかは「言わずもがな」ですね( ´艸`)
- レンジ相場と相性がいい(上昇・下落相場はさける)
- 重要行事や選挙期間、災害時などはさける(相場が荒れるから)。
- 現在の日経平均株価(ATM)から、できるだけ離れたオプションを売る(ガンマの値が小さいから)。
- 満期日までの日数が少ないほうが有利(セータの値が大きいから)。
- IVが高い(オプション料が高い)ときに取引をはじめる。
- 満期日(SQ日)前に、余裕をもって決済すること(SQ日とは?)。
上記最後の「満期日前に決済すること」は、ショート・ストラングルに限らず、すべてのオプション戦略に言えることです。
満期日直前は、機関投資家などの思惑がぶつかり合って相場が荒れることが多いので、必ず余裕をもってポジションを決済するようにしてください。
以上、ショート・ストラングルの解説は終わりです。
しかし...最後にお伝えしなければならないことがあります。
それは...損切(リミッター)です。
まとめ|ショート・ストラングル戦略
オプション取引に限らず、投資に損切は必須です。
損切上手は投資上手
ショート・ストラングルは売りポジションなので、前述のように損失は無限大となります。
たとえ利益になる確率が高くても、損失無限大ではこころとからだにやさしくありません。
いわゆる「コツコツ・ドカーン」です。
損失を限定にすると、受けとるオプション料が少なくなるので、一般的に嫌われがちです。
しかし、ショート・ストラングルは利益になる確率が高いので、少ない利益でも取引回数を増やすことで、満足のいく結果を残せると思います。
オプション取引は売りだけではなく、必ずオプションの買いを入れて損失限定にしてください。
ショート・ストラングルに損失限定の買いを入れると、オプション戦略最強(個人的見解)の「アイアン・コンドルスプレッド」ができ上がります。
アイアン・コンドルスプレッド
オプションの売りを入れたコールとプットの外に、オプションの買いを入れることで損失が限定になるのです。
アイアン・コンドルスプレッドについては、オプション取引|アイアン・コンドルスプレッドをわかりやすく解説をご参考ください。
また、オプション取引に慣れてきたら...
- 現在のコール売りポジションを損切して、プット売りポジションを利益確定する。
- 現在のポジションよりも、高いコールオプションとプットオプションを売り直す。
- 現在のプット売りポジションを損切して、コール売りポジションを利益確定する。
- 現在のポジションよりも、安いプットオプションとコールオプションを売り直す。
という戦略もできますね。
だからオプションはおもしろい💘
- 「ほったらかし投資」とは読んで字のごとく、商品を買ったあとは ”ほったらかし” ているだけの投資方法。
- 「ほったらかし投資」の中身はさまざまだが、投資のプロやAIに売買をまかせるというのが基本。
- 「ほったらかし投資」は、<初心者も始めやすい><少額から始められる><長期投資に有効な>投資方法。
それではまた。
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