
「意思表示」では、似ているものに気をつけながら学習するわ。




「無効or取り消し」「対抗できるorできない」をしっかりと確認するモン。
本ブログでは、宅建士の試験科目「権利関係の意思表示」について要約しています。
宅地建物取引士を目指している方に向けて、下記の書籍を参考にして作成しました。
ほんのわずかでも、宅地建物取引士を受験される方の手助けになれたら幸いです。
- 九州を拠点に自動車販売店を経営
- 2015年より金融系ブログ作成
- ほったらかし投資が座右の銘
契約の成立



この項目は試験に出されることはほぼありませんが、基本なのでしっかりと理解しましょう。
契約とは何か
「契約」とは約束のことです。
お店で商品を買うのも、「売買契約」という契約です。



契約はお互いの意思表示が合致したときに成立します。
売買契約が成立すると、売主から買主へ所有権が移ります。
なお、契約の成立には、原則、書面は必要ありません。
契約の成立
一度決めた契約は守らなければなりません。
- 土地を買う契約→土地の代金を支払う
- 土地を売る契約→土地を引き渡す



契約はお互いに話し合って決めるものなので、お互いが納得していればどのような契約でも良いです。




相手に対して負う義務は「債務」だわ。




相手に請求できる権利は「債権」だモン。
詐欺・強迫



民法は、暗記よりも理解が大事です。
詐欺




詐欺でだまされた契約も、守らないといけないのかしら?
詐欺による契約も、意思表示は合致しているので契約は有効です。
しかし、詐欺が有効ではだまされた側がかわいそうです。
したがって、詐欺の被害にあった人は契約を取り消せます。




詐欺=欺罔行為(ぎもうこうい)だモン。
- 無効=最初から何もないこと
- 取消し=取り消すまでは有効で、取消した瞬間に契約時にさかのぼって無かったことになる
強迫




強迫されて契約した場合はどうなるのかしら?
強迫も詐欺と同じように、意思表示は合致しているので契約は有効です。
しかし、強迫が有効ではおどされた側がかわいそうです。
したがって、強迫の被害にあった人は契約を取り消せます。
詐欺・強迫と第三者との関係
詐欺or強迫の被害者から、事情を知らず(善意)に買った場合は、詐欺の場合と脅迫の場合で異なります。




事情を知らないことは、善意だわ




逆に事情を知っていると、悪意だモン。
詐欺被害



詐欺でだまされた人は、相手の発言が本当かどうかを調べればわかるはずとみなされます。
したがって、詐欺被害者は調べることを怠った(落ち度あり)ということで、善意無過失の第三者に何も主張できません。
強迫被害



一方の強迫被害者には、落ち度はなしとみなされます。
したがって、善意無過失の第三者に対して対抗できます。
詐欺の被害者は善意無過失の第三者に取消しを対抗できないが、強迫の被害者は善意無過失の第三者に取消しを対抗できる
第三者に悪意や過失があった場合(詐欺や強迫を知っていた・知ることができた)は、詐欺・強迫にかかわらず取消しを対抗できます。
第三者による詐欺・強迫
第三者・買主に悪意があり有過失の場合は、詐欺被害者・強迫被害者ともに、契約の取消しを対抗できます。
悪意有過失の第三者と悪意有過失の買主



悪意有過失の第三者と善意無過失の買主(詐欺)



買主が善意無過失の場合は、売主の詐欺被害者よりも善意無過失の買主が保護されます。
したがって、契約の取消しを対抗できません。
悪意有過失の第三者と善意無過失の買主(強迫)



買主が善意無過失者で売主が強迫被害者の場合は、強迫被害者が保護されます。
したがって、契約の取消しを対抗できます。
まとめ
第三者 | 悪意 | 善意有過失 | 善意無過失 |
詐欺 | 〇 | 〇 | × |
強迫 | 〇 | 〇 | 〇 |
虚偽表示



民法は、かわいそうな人を保護するための法律です。
したがって、誰がかわいそうなのかを考えるようにしましょう。
虚偽(きょぎ)表示とは何か
相手と示し合わせて、売買していないのに売買したことにすることを、「虚偽表示」といいます。
*仮装譲渡ともいう



「くま子」は、借金取りから逃れるために、「くまばあ」に売ったことにしようとしています(実際に売るつもりはない)。
「くまばあ」は、自分名義にしようとしています(実際に買うつもりはない)。
上記の取引は、実際に売る意思も買う意思もないので、契約は無効です。
その後、「くまばあ」は自分の名義になった土地を「善意」に売ってしまいました。



- 【くま子】借金取りから逃れるために嘘をついた→かわいそうではない
- 【くまばあ】くま子を裏切って土地を売った→かわいそうではない
- 【善意】何もしらずに土地を買った→かわいそう
何も知らずに土地の売買トラブルに巻き込まれた「善意」は、「くま子」と「くまばあ」の契約が無効であれば、土地を返さなくてはなりません。
それでは「善意」がかわいそうです。
しかし民法には、虚偽表示の無効は善意の第三者には対抗できないとあるので、「善意」は民法によって守られます。
なお「善意」は、過失があっても登記を備えていなくても善意でありさえすれば保護されます。
転売した場合
一度善意の人に土地が渡ると、その後に「悪意」と取引しても契約は保護されます。



「悪意」は「善意」から土地を買っているので、悪意でも保護されてしまうのです。
錯誤



錯誤は以前、「無効主張ができる」というものでしたが、民法改正により取消しとなりました。
錯誤とは何か
「錯誤」は勘違いの意味で、錯誤による意思表示は取消しができます。
意思表示の取消しのためには、錯誤が「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なもの」であることが要件になります。




むずかしいわ。




錯誤を「勘違い」に置きかえると、わかりやすいモン。
要するに、その錯誤(勘違い)がなければ、表意者だけではなく、誰もが意思表示はしないだろうということです。
表示行為の錯誤
表示行為の錯誤
- 買う商品を間違えた
- 支払う代金を間違えた
「表示行為の錯誤」は原則として取消しできます。
動機の錯誤
契約をするきっかけが、勘違いであった場合などが「動機の錯誤」です。
たとえば、駅ができるという噂(実は嘘)で、土地を買いますという意思表示が動機の錯誤になります。



動機の錯誤の場合は、原則として取消しができません。
ただし、動機を相手に表示した場合は、表示行為の錯誤とすることができて、取消しができます。
表示の方法は、明示的(はっきり)でも黙示的(ふるまい)でもいいです。
取消しの要件
錯誤による取消しが認められるためには、表意者に重過失がないことが必要です。
ただし、以下の場合には、表意者に重過失があっても表意者は錯誤による取消しを主張できます。
- 相手の錯誤を知っていながらの契約
- 重大な過失によって知らないでの契約
- お互いに誤解している場合
取消権者
表意者が取り消す意思がない場合は、相手方や第三者が取り消すことは原則としてできません。
ただし、表意者が意思表示に錯誤があることを認めている場合は、第三者は、表意者に対する債権を保全するために取消権を行使できます。
取消しの効果
錯誤による取消しは、善意無過失の第三者には対抗することができません。
心裡留保



冗談を言った人はかわいそうではありません。
しかし、その冗談を信じてしまった人はかわいそうです。
心裡留保とは
「心裡留保」とは冗談のことです。



上から順番に、完全に信じてしまった人はかわいそうなので、契約は有効です。
しかし、何度も嘘をつかれていて1万円の土地が嘘と気づけた場合(善意有過失)や、嘘だと知っていた場合(悪意)は保護する必要はありません。
なお、善意の第三者には、その無効を対抗できません。
公序良俗に反する契約



民法は基本的に契約自由です。
当事者間で納得しているのならば、基本的に認める方向です。
しかし、どのような契約でもよいわけではありません。
公序良俗に反する契約
民法は、基本的にどのような契約でもよいというスタンスです。
しかし何でも構わないというわけではなく、反社会的な契約などは守る必要はありません。
そのような契約は最初から無効とされています。
- 殺人契約
- 愛人契約etc



第三者への対抗
公序良俗に反する内容の契約を守らせるわけにはいきません。
したがって、公序良俗に反する契約の無効は、善意の第三者にも対抗(主張)できます。
それではまた次回。






コメント